プライベート・ライアン
Saving Private Ryan

製作国 アメリカ
製作年 1998年
公開年 1998年
時間 170分

時代背景 WW2


製作会社 アンブリン・エンターテイメント/ドリームワークス/マーク・ゴードン・プロ
監督 スティーヴン・スピルバーグ
脚本 ロバート・ロダット
フランク・ダラボン
撮影 ヤヌス・カミンスキー
音楽 ジョン・ウィリアムス
出演 トム・ハンクス
トム・サイズモア
エドワード・バーンズ
バリー・ペッパー
ヴィン・ディーセル
ジョヴァンニ・リビジ
マット・デイモン
テッド・ダンソン
ジェレミー・デイヴィス
デニス・ファリナ
ポール・ジアマッティ
デイル・ダイ
ハリソン・ヤング
シェーン・ジョンソン

[概要]
ノルマンディ上陸作戦時、行方不明になった空挺部隊隊員を救出するためにレンジャー部隊に命令が下される。

[映画賞]
アカデミー賞(1998)
監督賞 スティーブン・スピルバーグ
撮影賞 ヤヌス・カミンスキー
音響効果賞
音響賞
編集賞

NY批評家協会賞(1998)
作品賞

LA批評家協会賞(1998)
作品賞
監督賞 スティーブン・スピルバーグ
撮影賞 ヤヌス・カミンスキー

ゴールデン・グローブ賞(1998)
作品賞

イギリス・アカデミー賞(1998)
音響賞
特殊視覚効果賞


[ソフト化]
ビデオ・LD・DVD

[Goods]
チラシ

 9,975円
プライベート・ライアン 第二次世界大戦の真実 [再販]
PDS-1106
パラマウント/ビクターエンタテイメント
(2004/11/26)

 4,179円
プライベート・ライアン
アドバンスト・コレクターズ・エディション
[再販]
PDA-262
パラマウント/ビクターエンタテイメント
(2004/11/26)

 2,500円
プライベート・ライアン [再販]
ハッピープライス(2004/3/31まで)
PDH-133
パラマウント
(2004/02/20)

 2,500円
プライベート・ライアン
[再販] *特典ディスクなし
ハッピープライス キャンペーン(2003/11/28まで)
PDH-82
パラマウント/ビクターエンタテイメント
(2003/09/05)

cover 2,500円
プライベート・ライアン [再販] *特典ディスクなし
[ハッピープライスシリーズ](2002/8/30まで)
PDH-1
CIC・ビクター
(2002/06/07)

 4,700円
プライベート・ライアン

スペシャル・リミテッド・エディション
PDF-20
CIC・ビクター
(2000/11/10)

プライベート・ライアン 2,420円
ジョン・ウィリアムズ
ユニバーサルインターナショナル

プライベート・ライアン 590円
著者:マックス・A. コリンズ
翻訳:伏見 威蕃
新潮社(新潮文庫)

プライベート・ライアン 2,900円
著者:スティーヴン・スピルバーグ
   デイヴィッド ジェイムズ
翻訳:品川 四郎
竹書房




レビュー人数
22人
平均点
7.9点
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yuki
10点
こんにちわ!初めてレビューに参加します。SPRはネットを始めるきっかけに、あまり自覚してなかった自分の嗜好に気付かせてくれた(笑)映画です。

SPRが公開されて風の噂に「Dーdayの場面が凄い!」と聞いてその場面見たさに見に行こうと思ったのでした(笑)昔NHKでたまたま見た写真家キャパの特集番組。多くの名作写真の中で一番衝撃を受けたのがDーdayの写真。ぶれた画面から言葉にできない事実が伝わってきました。写真が発明されてから数々の報道写真が生まれているけどキャパのこの写真が私のなかではNO1です。そんな訳で、キャパがいた現場を映像で見てみたい!と映画館に足を運んだのでした。

最初の15分間、自分がオマハビーチに放り出されたような恐怖で固まってしまいました。映像の凄さ、音のリアルさ(これは、SPRのBBSで十分語られてますね)LCIのランプが開いたとたん、飛び散る肉片と血しぶき。SPR以前に見た戦争映画では感じなかった生の恐さを感じたのでした。弾が飛び散るあの金属音は本当にスゴイ!音がするたび、座席で弾を避けてました。音で映像に引きずり込まれたって感じです。

内容よくを知らず、取りあえず「オマハのシーンを」と見に行ったので、話が「ライアン救出作戦」へと転がっていった時は「オーまい・がっ」でした。なんて余裕があるんだー。それともアメリカ人っておバカ?と最後のシーンで涙ぐんでる連れに言っていました。
そんな疑問も残りましたが、只の一兵卒である登場人物達の繰広げるエピソード一つ一つに感動してる自分もいました。オマハの後の展開は戦争映画に慣れてない私にも判りやすい(笑)展開で、それもこの映画にはまった一因だと思います。

クサイ!と思うシーンはミラー大尉が兵隊になる前の職業を部下に告白し、ライアン救出の意味を語るシーン。ここは、映画の見せ場の一つで感動するに相応しいシーンと思います。
ライアン救出の意味はこの映画の主題であり、それを遂行する彼等を通してこの映画での「戦争」の意味を語る場面だったと思うのです。
実は、最初見た時は素直に「そうかぁ・・・」と思ったのですが、時間をおいてみると、単純な演出に思えてきました。その前のエピソード−ウエィドが死んでしまう−からの展開がうまくおさまり過ぎな感じです。が、映画なんだからこういう判りやすい演出がヒットの秘けつですよね。それにまんまとはまったのが私自身ですし(爆)

オマハ以外のシーンでも好きなシーンてんこ盛り。
・ライベン達が死んだ兵士の認識表の中からライアンの認識表を捜すシーン
・オマハの戦闘の後、上司から呼び出されたミラー大尉の後ろ姿
・ラメルの戦闘の前ミラー大尉がライアンに自分の奥さんの事を語るシーン
 もっと話してほしい、というライアンに「自分の胸のなかだけに」という台詞
 にジーンときました。
・ラメルの戦闘の時の戦車兵
・メリッシュを殺すドイツ兵が囁くドイツ語(ちょっと悪趣味?)
・戦死したミラー大尉を前に声をなくして「メディーック」と叫ぶライベン

SPRはやっぱり最初の15分間。オマハのシーンに尽きます。この15分に座布団10枚!凄い映像、リアルな音。次はぜひ完全版を見たいです。
なので、オマハビーチに6点、その後に4点で10点とします!

ジョン・ミラー
10点
極一部に若干の瑕疵はありますか些細なことを吹き飛ばす力を持つ素晴らしい作品です。私が映画を見るポイントの1、2、3、すべてに満点の10点の評価をいたします。
さまざまな書籍で特集され、オスカー5部門の受賞作でもある大変な話題作なので内容は他の皆さんと重複する可能性がありますが自分なりの視点で述べさせてもらいます。

*1、脚本、演出 10点
この映画は米国で数々の賞を受賞しオスカー作品賞の最有力候補でした。したがって日本でも上映前から多数の紹介記事やコマーシャルで話題になり冒頭のオマハビーチやクライマックスの橋をめぐるドキュメンタリータッチの派手な戦闘場面が強調されました。確かに従来の戦争映画とは比べものにならないほど戦闘場面では臨場感あふれます。
がメインのテーマは主演のトム・ハンクス演じるミラー大尉を中心とした8人の分隊員の心の内面を丁寧に描いた人間ドラマの秀作です。
ミラー大尉が「故郷では学校の教師だった」と告白する場面や「ライアン上等兵を救った事がこのろくでもない戦争のどん底でできた唯一の誇れる事だった。これをやりとげれば胸を張って故郷に帰れるかも知れない。」と述べる場面などは私の心の琴線に触れてきます。
従来のスピルバーグ監督作品同様、トム・ハンクスを除きビックスターを多用しなかったのが、登場人物それぞれにの役柄に深み与え好結果をもたらせています。主演のトム・ハンクスは控えめの演技で好演しています。それにしてもますます良い役者になり昔からのファンの一人として嬉しく思います。
もう一つのキーワードは「リアルが合言葉」です。
スピルバーグ監督はインタビューで次ぎのようなエピソードを語っています。「当初、第2次世界大戦の映画を自分が作るとは思っていなかった。」「なぜって派手なヒーロが駆け巡るランボーに代表されるハリウッド式熱血映画は自分に作れないし作る気も無いと考えていた。」「自分が作るならリアルを合言葉にして観客に血湧き肉踊る派手な興奮の代わりに見ているのがいたたまれるようなドキュメンタリーな映像感覚を味わって欲しかったんだ。」「そのために撮影監督のヤヌス・カミンスキーと話し合い、ハンディカメラを多用することとし撮影カメラについているフィルターやフィラメントなどすべて取り外してしまい、第2次大戦当時に使用されていたカメラと同じ環境にしてしまった。」「さらに戦闘場面の撮影では、1940年代にニュース報道版が使っていたベル&ハウェル社の手持ちカメラと同じシャッタースピードで撮影した。」撮影後も現実味を出すために現像段階で脱色過程を入れ、完成した最終ネガから色彩要素のおよそ6割を排除してしまったのは皆さんご存知の通りです。
撮影監督ヤヌス・カミンスキーは次ぎのようにも述べています。「今回の作品では抜けるような青空は不用だし爽快な白い雲も要らない"ライアン"の故郷アイオワの空も日差しはあるものの決して青空じゃない。私はくすんだ絵葉書のような空が欲しかったんだ。」自宅でモニターなりプロジェクターの映像エコライジングをする場合はくれぐれも前記の事を踏まえ青い空や真っ赤な血の色などは望まないでください。
映画ではミラー大尉を含め8名の分隊員の性格描写が非常に丁寧に描かれています。私自身はトム・ハンクスが演じたミラー大尉の生き様に共感を覚え、目標にしなければと思ってますが、実際はとてもとても真似など出来ません。残念なことにエドワード・バーンズが演じた爆発的性格のライベン上等兵の生き方を日々しているようです。
見所は随所にありますが、分隊とライアンが初めて出会う場面で映画館の大スクリーンに映された武装親衛隊が乗車したsdkfz251には私は感激しました。
最後の橋を巡る攻防戦で「アラモの砦」の言葉が使われますがアメリカ人のメンタリティーを再確認し興味深く思いました。この映画に限らずアメリカ映画には過去にもアラモやディービー・クロケット(アラモの砦でメキシコの大軍と戦い戦死したアメリカの英雄)のエピソードが使われます。

*個人的にひっかかる事が1件あります。それはレーダー基地の戦いで捕虜になりアパム伍長の抗議などで釈放されたドイツ兵とクライマックスでメリッシュ一等兵を刺殺するドイツ兵は別人ですが同一人物だった方が自然だったのではないでしょうか。その方がメリッシュを刺殺した後、階段で恐怖で震えていたアパムに危害を加えず何事も無く、すれ違ったのもつじつまが合って納得します。彼は自分を助けてくれたアパムをこの時点で覚えているので震えているアパムに手を出さなかったと考えます。それにしても似ていますね私は映画館で見た時は同一人物と思っていました。

2、考証 10点   「リアルが合言葉」の通り考証もほぼ完璧です。あえて重箱の隅をつつくような事はいたしません。
米、独軍兵士が着用している軍服から装備品の数々までほほ゛完璧に当時を再現している。ミラー分隊の装備品はM1ガーランド・ライフルを主としてトンプソン・サブマシンガン、BAR分隊自動銃、とジャクソン一等兵が使用していたスプリンーグフィルド・ライフルは少々珍しいが、他は当時の分隊の標準的な装備と考えます。

*ミラー大尉の中隊が上陸時に着用していたアサルト・ガスマスクやアサルトベストの装備品などにも感心しjました。
空挺師団の兵士がM1カービンのパラトルーパーを持っていたりと芸が細かいですね。第29師団第2レンジャー大隊や第101、82空挺師団の戦闘服や徽章も忠実に再現されています。独軍もKar98k、MP40、MG42などなど装備に抜かりはありません。アラモの戦いではT34を改造した対磁性コーティングを施したティガー戦車には感動すら覚えました。これまでの映画で登場した改造ティガーではピカ一です他にもマーダー対戦車自走砲、sdkfz2ケッテンワラット、20mmFalk等などファンにとってはたまらない作品です。

*史実のエピソード
ミラー大尉の所属する第2レインジャー大隊C中隊は実際に存在し、1944年午前6時30分に上陸第一波としてオマハビーチに上陸した部隊です。
本来の計画ではオマハビーチの右側にあるオック岬の崖上に据えつけられているはずだった155ミリ砲の破壊が目的だったのですが計画の遅れから予定変更になりオマハビーチのC地区に上陸する事になり、さらに潮流に流されD地区に上陸しました。これは史実の通りに描かれています。また兵士の上陸開始時刻5分前にシャーマン戦車(水陸両用)32両を揚陸させる計画だったのですが、瞬時のうちに27両が荒波に呑まれ僅か2両しか海岸に到着しなかったそうです。なお悪いことに当初の情報ではオマハビーチの独軍守備隊は二線級の第716歩兵師団のはずだったのですが、実際は東部戦線を転戦した精鋭部隊の第352師団に入れ替わっていたために抵抗が強く米軍の死傷者は続出し損害は映画の通り甚大でました。この日のオマハビーチだけで米兵の死傷者は4000名を数えノルマンディー上陸作戦中最大の損害を出しました。想像してみてください幅約12キロ奥行き50メートルしかない砂浜で前述のような多数の死傷者を出したのです。夕方まででやっと内陸部1.5キロしか進めませんでした。このような史実からアメリカ映画ではノルマンディー上陸作戦に関するものはオマハビーチを素材にした物が多いのです。
*補足1
米軍のレインジャー部隊は一部の例外を除き通常は、どの師団にも所属しない独立大隊であった。(第29歩兵師団だけは直属のレインジャー部隊があった。)
DDayでの部隊運用は複雑になり当初、第2レインジャー大隊は第29歩兵師団が基幹の第116戦闘団傘下となっていたが上陸時には通称ビック・レッド・ワンで有名な第1歩兵師団の指揮下で上陸し戦闘状態に突入した。
*補足2
戦闘団とは基幹となる歩兵師団の特定の連隊に若干の戦車、砲兵、工兵、補給部隊を加えて特別に編成した部隊のこと。

*フィクションのエピソード 
ご存知でしたかテレビドラマ"コンバット"のサンダース軍曹の分隊も6月6日のオマハビーチに攻撃の第一波として上陸しているのでミラー大尉と一緒に独軍を攻撃している可能性があるんです。   題名「ノルマンディーに上陸せよ」

3、サウンド・デザイン 10点(映画館&LDドルビーデジタル5.1Chの再生)
戦争映画の知識がほとんど無いAV(オーディオ・ビジュアル)マニアの間でもSPRのLDのサウンド・デザイン(ドルビーデジタル5.1Ch)は大変な評判です。
未体験の方は、ぜひLD5.1Chの視聴環境を整えてみてください。立体音場とLFEの重低音の迫力にきっと驚くと思います。
各種の銃や砲の特徴ある発射音が再現でき我が家の貧弱なシステムでも余りの臨場感に鳥肌が立ってきます。(安物の小型リアスピーカのコーンが破れそうです)
上陸直前の上陸用舟艇の場面では波しぶきがかかりますが我が家では本当に頭上から波が落ちて来て雨合羽が欲しくなるような状態になります。
上陸直後の30分間に渡る戦闘場面では前後左右から射撃音が部屋に轟き渡り恐怖感で鳥肌が立ち銃弾が、わが身を切り裂く状態になります。思わずわが身を隠したくなります。砲弾の着弾シーンでは顔には爆風が吹きかかり我が家のフローリング床はミシミシと音を立てます。すでに5.1Chを実践している人は理解していただけると思いますがこれ本当の事です。
ただし、LFE重低音をあまり強調してしまうと低音の切れが悪くなり逆に臨場感が無くなりますのでほどほどにしてください。
"カパーゾ"が独軍狙撃兵に射殺される雨の場面でも我が家のリビングは本当に降雨の状態でした。
クライマックスの橋を巡る攻防戦のアラモの戦いでは遠くから響きわたるタイガー戦車の重低音が我がリピングを揺らします。

*最後のエピソード。
スピルバーグ監督は撮影後のインタビューでこのように述べました。
「この映画のタイトルは[saving Captain Miller]にしようと思っているんだ。というのもこれは自分の失った人間らしさを求めている男の話だからね。」

参考資料 
saving private ryan 竹書房(写真集メイキング本)    2900円
saving private ryan 東宝 (映画パンフレット)      500円
saving private ryan 新潮文庫 (文庫本)   590円
saving private ryan パイオニアLDC( レーザーディスク ) 6700円
ノルマンディー上陸作戦  学習研究社 1600円
史上最大の作戦      ハヤカワ文庫
兵士完全図鑑 ワールドフォトプレス 1800円
ドイツ国防軍大図鑑 スコラ 2600円
PANZER     アルゴノート社       1250円
コンバットマガジン ワールドフォトプレス
戦車マガジン
コンバット・クロニカル  グリーンアロー出版社     2500円
その他

ハウプマン
10点
 戦争映画史上に巨大な足跡を記した、スピルバーグの大傑作。この映画によって、戦争映画は戦闘シーンの過激なまでのリアリティを要求される重い十字架を負わされることとなった。

 オープニング早々のオマハビーチ上陸戦闘は、観る者のど肝を抜き、容赦なく訪れる死の前に兵士の肉体の脆さ、命のはかなさを冷徹につきつけた。「これが、戦争だ」というスピルバーグのこのメッセージが第二次大戦のヴェテランの間に生々しい記憶を蘇らせ、戦争を知らない世代には従軍経験者に対する畏敬の念を起こさせる社会現象を招来したことは特筆に値する。

 また、プロローグとエピローグの墓地シーンを除けば、映画は時間の流れにそって進行する。回想や「心」の声など映画的な心理表現を徹底的に回避し、全て「言葉」と「行動」によってキャラクターの心理に迫ることができる実験的手法も素晴らしい。一見、不親切に思えるこの手法によって、観客は彼らと同行し、彼らの言動を見聞きするという「実体験」によって、彼らの行動の原点をたどるという新しい映画の楽しみ方を知ることができた。

 「ラストバトル」は冒頭のオマハ戦闘の完成度に比較するとかなり色褪せるが、黒澤映画「七人の侍」のオマージュととらえると、許せる気がする。

 最後に、ジョン・ウィリアムスのオリジナル・スコアは戦没者への鎮魂歌として、いつまでも私の心に響き続けるでしょう。このテーマだけで、もう泣けます。

Densuke
10点
オマハビーチのシーンで私はぶっ飛んだ。
何だこのリアリティは。
うわさには聞いていた。 ノルマンディ上陸作戦に参加した元米軍兵士がこれを観てひきつけを起こしたという話も聞いていた。しかし映画館の中でSPRを観ながら、その時確かに私はそこにいた。海岸で、飛び交う弾を避けながらひたすら助かる事を願って。

昨年の夏初めて観たSPRの印象はあまりにも強烈だった。
戦争映画を観てこれほど戦場の怖さを体験させてくれた映画はPlatoon以来だが、その迫力はPlatoonのはるか上を行っている。なにせ作られた時代が違う。 特殊効果、音響効果、全てがPlatoonの時代と比べ格段に進歩している。弾が自分に向かって飛んでくる恐怖を体験させてくれた映画はこれが始めてだ。

後半、ラメールの戦いでは戦車がいかに歩兵にとって恐るべき兵器か理解させてもらった。言葉じゃなく音で。 いや、振動で。

最初、ライアンが帰れると知っても、戦友を残して独りだけ帰る事は出来ないと言ったとき、これは美談だけどちょっとくさいなと思った。しかしその後米軍の空挺隊の事を知って納得した。空挺隊員の全ては志願兵だが、訓練でその2/3以上が振るい落とされる。 それだけ過酷な訓練を潜り抜けてきた彼らはエリート兵士だ。彼らは誇り高き空挺隊員なのだ。 彼らは単なる戦友ではなく正に兄弟なのだ。

最近、知人と一緒にSPRのビデオを見た。 彼もこの映画をたいそう気に入っている。その理由は「この映画に出てくる人々の行動にうそはないから」だそうだ。彼は1979年、イラン革命勃発のときにイランにいた。 しかも政府側の仕事をしていた(英語の教師だったそうだ)。それから3日間、脱出するまで生死の境に彼はいた。彼は楽観主義者で、しかも当時は二十代と若かった。 だがあの時は本当に自分の死を予感したそうだ。その時の体験で彼は様々な人の行動を目にした。 体格が良く、日頃は自信にあふれているような人が恐怖におびえ愚かな行動をする。多くの人はパニックに陥った。 その中で冷静に行動した人々もやはり多くいた。

彼がいた宿舎に革命軍兵士がやってきたとき、逃げた先が袋小路だと分かったときの絶望感。なんて馬鹿な間違いをしでかしたんだ。その時は運良く兵士が彼の方には来なかったので助かった。 彼は間違った、しかしたまたま運が好かったので助かった。

革命軍のヘリが宿舎を機銃掃射したとき、机の下に隠れながらレンガ造りの壁を貫いて弾が自分に当たるのではと真剣に考えた。普通だったら分厚いレンガを機関銃弾が貫通するなど考えられない。 しかしその時通常の思考能力はすでにない。一瞬の判断の違いで生死が分かれる。 どんなに気を付けても、正しい判断を自分でしても運が悪ければ死ぬ。

彼はその無情の世界を実体験した。
彼が言うにはあの時は何とかパニックも起こさずうまく切り抜けた。 自分でもうまく行動した方だと思う。しかしもし、もう一度同じような事が起こったら、この次にもうまく出来る自信は全く無い。 この次はパニックを起こすかもしれない。

Saving Private Ryanの中で、
カパーゾがフランス人少女を連れて行こうとして狙撃される。 実戦経験豊かな彼がなぜこのような行為をしたのか。実戦経験が無いアパムが今回の任務は自分にとってよい経験だという。 -> 捕らえたドイツ兵”スチームボートウィリー”を(人道主義?)助けてやる。-> しかし実際の戦闘(ラメールの戦い)では恐怖のため戦友を見殺しにする。 -> 戦況が逆転するととたんに元気が出て数人のドイツ兵を捕らえるがその中にいた”スチームボートウィリー”を私怨で射殺する(せっかく助けたのにまた敵対してきた。 しかもミラー大尉を撃った)。 更に残りのドイツ兵を逃がしてしまう。メリッシュを銃剣で刺し殺したドイツ兵がその建物から去るとき階段に、戦意を無くし引き金から指を外し、恐怖に震えてうずくまっているアパムに一瞥をくれて殺さずに立ち去る。 なぜ敵を殺さないのか?

こういった一見無秩序な、一貫しない人々の行動も知人の話を聞けばうなずける。これは本当にありえる話であり、実際過去の戦闘の中で数限りなく行われた事だろう。

戦う事の意味、任務を全うする事の意味。
どこの誰かもわからない一人の兵士の命を救うために自らの命を犠牲に知なければならない兵士たちの心の葛藤を描きながら、この映画は私たちに語りかけてくる。今の世界はあの多くの名も知れぬ兵士たちの犠牲の上に成り立っている事を忘れてはならない。ただ単に二度と繰り返してはならないという事ではない。 あの犠牲を無駄にしてはならないのだ。

スピルバーグ監督、ジョンミラー大尉役のトムハンクスはアメリカにとって正義の、栄光の戦いである第二次大戦の実態を白日の下に曝け出しなお且つその地獄の中で国のために戦った兵士たちに感謝の意を、畏敬の意を込めてこの映画を作ったと思う。

Earn it. ミラーがライアンに最後に言った言葉は私たち今に生きる時代の全ての人に向けられた言葉だ。

確かにスピルバーグの悪い癖は散見される。 しかしそんな些末な事でこの映画の価値が下がるような事はない。少しほめ過ぎの気もするが、とにかく良く出来た映画だと思う。

ADU
10点
この作品は思い入れが強すぎて何を書いていいのか解らないというのが実感です。この先大人になっても、年をとっても、思い出の映画として、ずっと残っていく映画だと思います。そういう意味では10点どころか、120点あげたい映画なのです。
この作品の中で一番の気になる点は、ドイツ兵の姿が見えないことです。見えなくてもいいのです。見えないというのは、ドイツ兵の脅威が伝わってこないという点です。この映画を観ていて、確かに最初のオマハの戦闘シーンは凄かった、視覚と聴覚をマヒさせられたみたいに、その中でとまどう自分を感じさせられました。が、でもこのシーンでさえ、あんなスゴイ事になっている連合軍の兵士を攻撃しているドイツ兵の姿が伝わって来ないのです。初めての実戦の兵士もたくさんいたでしょう。彼らにとっては、ドイツ兵が自分たちと同じような人間だということ自体が信じられなかったのではないでしょうか。ああ、そうかこのシーンはドイツ軍と戦っている連合軍を描いているんじゃなくて、ノルマンディに上陸していく連合軍を描いているんだと納得してしまいました。この疑問は、作品を通して湧いてきて、そして同じように納得していく。レーダーサイトにしても脅威なドイツ兵はいなく、捕虜となったスチームボートウィリーが描かれる、ラメルでの戦でもティーガーやパンター戦車は確かに凄い、その姿と振動を伴った音には、確かに凄い手ごわいぞと思うけど、ティーガーなどを操る部隊の将校などは歴戦の勇士(しかもSSです)だったと思うのですが、見えてこない。やっぱりそうすると、この作品はジョン・H・ミラー大尉と彼と運命を共にすることになった分隊の”こころ”の映画なんだと。その中に、あの撮影賞を獲得したリアルな映像と、魂を昇華させていくジョン・ウイリアムスの音楽があるんだと。

時代考証や兵器などは、詳しいかたたちが、絶賛しているように、すごいのだと思いますが、私にはわからないことなので、ふれません。ちょっと変な見方になってしまいました。
ミラー大尉の”場面で思い出すんだ”という言葉は大好きです。高校の国語教師という設定から出た言葉だと思いますが、私の中では、とても大切な言葉として残っています。

hidetomo
10点
いままで見た戦争映画のなかで最大の衝撃を与えてくれました。少なくとも冒頭のオマハビーチの上陸シーンは全ての人が一度は見るべきです。全ての人に戦場の惨劇をリアルに疑似体験させてくれる映画としては文句のつけようがありません。ひょっとして監督が本当に撮りたかったのはこの上陸シーンなんじゃないか、あとのお話はどうでも良かったんじゃないかとさえ思えてきます。観客はオマハビーチに上陸したレンジャー部隊と同じ経験を疑似体験します。ハンディカメラによる臨場感あふれる撮影と立体音響のおかげで、冷暖房完備の快適な映画館の席でも、自宅のカウチでも観客の意識はDデイのオマハにワープするのです。軍曹が「射撃やめ」と叫んでも倒れたドイツ兵を撃ちつづけるアメリカ兵たち、(チェコ語で叫びながら)降伏するドイツ兵を撃ち殺すアメリカ兵。戦場の狂気を目の当たりにし、人間はここまで残酷になれるのかと戦慄を覚えました。

その後のストーリーの基本設定は若干現実離れしているかなと感じられますが、アメリカだったらひょっとして起こり得たかもれないと思わせるもので、許容範囲です。どうしても気になるのは出てくるドイツ兵がみな坊主頭であること。アメリカ人のワンサイドな視点から作られている映画ですが、この演出だけは許せません。

しかしながら、戦場の現実を初めてリアルに再現した映画として、映画史上に残る作品であると断言します。最後にこの映画は出来るなら、大画面、5.1チャンネルの環境で見たいものです。音響面の適切な再生なしにこの映画を正しく評価することは出来ません。私はこの映画を見たいがためにDTS再生アンプを買ってしまいましたが、それだけの値打ちはあります。

毒蛇・守下
9.5点
いよいよ「ライアン」ですね。まずマイナス0.5の減点は、よく言われていることかもしれませんが、ラストのミラーとライアンのセリフですね。「プラトーン」のとこでも書きましたけど、興ざめです。それから、「一人残った息子を母の元に・・・8人の兵士が・・・この任務のために8人の命が・・・云々」といったハナシは、僕は全く考えてません。で、「ライアン」で最も僕の心を打ったのは、やっぱり戦闘シーンですね。あれを観せられたら、「絶対に戦争なんかには行かないぞ。」って、大抵の人が感じると思います。逆に「行きたい」と思う人もいるかもしれませんが。それにしても、「ライアン」は過去のいくつもの戦争映画を思い起こさせる作品でした。最初のオマハビーチでの戦闘シーン。戦慄する僕の耳に、ある唄が聞こえてきました。「海は死にますかー 山は死にますかー」 スピルバーグが「二百三高地」を観たかどうかは知りませんが、舛田利雄監督が「二百三高地」で描写できなかった部分を、スピルバーグは描写したかったのだと感じました。僕の頭の中で、オマハビーチで蜂の巣にされるアメリカ兵と、旅順要塞で蜂の巣にされる日本?,兵は、ピタリと重なりました。その他にも、「ライアン」には「二百三高地」を思わせるところがあります。それは、ミラーとアパムのキャラクターです。ミラーは有能な小隊長で、もと教師。アパムは小隊内で唯一敵国の言語に精通で、そのため最初は敵兵に理解をしめすけれど、最後には憎しみをもって殺すようになってしまう。この2人キャラを足すと、「二百三高地」の、あおい輝彦が演じた古賀(漢字合ってるか?)小隊長のキャラになります。やっぱりスピルバーグは「二百三高地」観てますね。次は雨の廃墟のシーン。カパーゾが狙撃されるのは、どう見ても「フルメタル・ジャケット」。その後のスナイパー対決は、「山猫は眠らない」っぽかったです。んで、ラストのながーい戦闘シーンは、当然というか、「七人の侍」です。緻密な防衛策を練ったあと、遠方から聞こえてくるタイガーの音。「七人」の興奮そのままといった感じ。戦闘に入ると、ミラーは勘兵衛に、ジャクソンは久蔵に、ライアンは勝四郎に見えてきます。しかも、この戦闘開始時のミラー小隊の人数、8マイナス2(カパーゾとウェイド)プラス1(ライアン)で、ちょうど7人。?,戦闘終了時の人数は、ライアン、ライベン、アパムの3人(でしたよね?)。「七人」も、勘兵衛、七郎次、勝四郎の3人。さすが、黒沢明を尊敬するスピルバーグといったところでしょうか。(でも、最初の戦闘シーンに比べ、最後の戦闘シーンはエンターテイメント性が強かったような気がしました。僕としては、最初と同じく、徹底して戦闘の残酷さを描いて欲しかったという思いもあります。)ラストのラストで登場するのが、P51。「太陽の帝国」と同じく、スピルバーグの思い入れたっぷり。P51がよっぽど好きなんでしょう。長くなりましたが、「ライアン」はこんな具合に多くの映画が引っぱり出せるさくひんでした。(恥ずかしながら「特攻大作戦」「戦略大作戦」を僕はまだ観てませんが。)やはりスピルバーグは、戦闘の悲惨さを伝えながら映画ファンを楽しませる映画を撮ることが出来る、素晴らしい監督といえます。それから最後に、今回もイイ仕事してますねぇ、ダイ大尉!

ARMY
9点
オープニングのシーンで始めなんじゃこりゃー!!とおもった 
それでは再現してみましょう・・・

ノルマンディー上陸のためにビーチに向かう船数隻
オマハビーチの上陸艇の中で 緊張 恐怖 船酔いなどの影響で吐く兵士
首から下げた十字架にくちずけする兵士(ジャクソン上等兵)
そして自分の水筒を手を震わせながら飲むミラー大尉
いよいよ上陸艇の壁が開き兵士達が突撃
しかしそのとたんドイツ軍の砲撃が容赦なく襲いかかる
上陸艇の前列にいた兵士はどんどんとやられていく
なかには海へと逃げ込んだ兵士がいたが水中にも銃弾がとびこみ、もがき
苦しみ息を絶えてゆく
なんとか陸にあがった兵士達にも銃弾がすごい勢いで飛んでくる
しかし勇敢にも兵士達は前方をめざし進んでゆく
中には海岸の障害物に隠れて泣き叫んでいる若き兵士の姿もあった
そして上陸したミラー大尉の目に映ったものは酷い光景ばかりだった
火だるまになる兵士 吹き飛んだ自分の腕を探す兵士 飛び出た内臓を
おさえながら ママ ママと叫ぶ兵士 地雷を踏んでふっとぶ兵士
衛生兵にその場で手術され 傷口を見るな と言われている兵士
そして数えきれないほどの死体が転がっている海岸をミラー大尉達は進む
やっとの思いで前方の丘にたどりついたミラー大尉
そして反撃のいとをつかもうと爆撃筒で鉄条網を破壊し敵の陣地へと
乗り込んで行く・・・

このように自分にはオープニングのこのシーンがとても強く印象にのこり
戦争の恐ろしさや愚かさを改めて実感しました

レビューということで評価のポイントをあげるとまず完成度が高いこと
戦争の中の人間ドラマがあること 役者ががんばっている(無名の役者)
ことなどいいところをあげたらきりがないくらいです

あと再現の文章はまちがっててもゆるしてください
最後にこの映画見てよかったー!!

Shawshunk
9点
やっと観ましたSPR!感想は皆さんと同じ。戦闘シーンにはぶったまげました。人間の肉体なんて銃弾の前には実に脆いものなんですね。それに効果音の凄さ!目と耳をふさぎたくなりました。しかし、こういう戦闘場面はどこかで観たことがあるような?そう、小林源文の劇画だ!「こうならなきゃいいな・・」と思う方向に容赦なく進んでいく
その展開と無慈悲さは、小林劇画を映像にしたようだ。全体を通してスピルバーグ特有のヒューマニズムが漂っているが、ライアン本人に焦点が合っていないと思う。彼の葛藤がもっと戦闘中にも表現されていればと感じた。以下戦闘シーンの感想。
・MG42はもっと発射速度が早いのではないか。「布を裂くような」発射音ではないのか。
・60MM迫撃砲弾を投げる場面があったが、あれは可能なのか。
・20MM機関砲を対人に使っていたが、まったく恐ろしい。
・M1ガーランドとモーゼルライフルの火力の違い。同時に弾薬補給の大切さ。
・「ケッテンクラート」にもっと活躍して欲しかった。(さすがに壊せない?)
・「手製対戦車爆弾」の場面もやはり悲惨。太平洋戦争の日本兵を思い起こさせる。

どうも見終わったばかりのショックで散漫なものになってしまった。SPRを観ながらある映画を思い出した。サミュエル・フラーの「ビッグ・レッド・ワン(最前線物語)」だ。SPRは確かに素晴らしい。一つの到達点だ。だけど、ローテクの「最前線物語」もなかなか捨てがたい。そう思いません?

ひろし
9点
アメリカ人にとって、リンカーンは偉大な人物なのですね。手紙が本当に書かれた物だとしたら個人としても素晴らしい。
しかし現場の人間にとっては納得のいかない任務。ミラー大尉は指揮官としてだけではなく、個人としても大人の感性で任務を遂行していく所がいいですね。
名誉の戦死・・・ノルマンディーの海岸で沢山見せ付けてくれます。銃剣と鏡とガム、突破口を開く鍵が超人的な頭脳と勇気と物量ではなく粗末な小道具である所がいいです。
ドイツ兵の描かれ方も納得出来ます。投降するドイツ兵には大戦初期、進軍する若いゲルマン民族の面影はありません。
しかし、「殺しのスペシャリスト」狙撃兵は精悍で、SS兵士も強い。メリッシュ達の潜む所に次々と投げ込まれる手榴弾に敵の手強さを感じます。
よく出来た映画、出来過ぎです。唯、最後に年老いたライアンがミラー大尉の墓前で敬礼するのが私は嫌ですね。
涙の出そうなミラー大尉の最期の言葉に対して敬礼と星条旗は頂けないと私は思います。

NANA
8点
ストーリー<3/5点>演技<3/3点>考証<2/2点>

みなさん「絶賛」なので、辛口に。
ストーリーは、「いかにも、ステロタイプ」「スピルバーグらしい」という感がぬぐえません。同じノルマンディ上陸作戦を扱った映画では、大局を見据えてミニマムな兵士のエピソードをちりばめた「史上最大の作戦」に対して、兵士のエピソードに終始したのがプライベート・ライアンという感じです。どちらかというと「コンバット」に近いストーリー構成です。激烈な上陸、生き残った少数の人々、些細な優しさから死んで行く仲間、無情な敵、クライマックスの戦闘、悲しいエンディング。また、画面構成や演出も「いつかどこかで見たことあるような」ものが多く、ー2点です。最後のラメルでの戦闘の必然性も疑問です。通常ならば戦車4台と歩兵50名がわかった時点で、橋を爆破し、撤退するのが当たり前です。また、指揮官はなぜ携帯無線機を持っていないのでしょう?

ただ、カミンスキーの撮影方法は、大変すばらしいです。彩度を落とし、コマ落とししたハンディカメラの映像は、確かに当時の戦場カメラマンの映像と同じです。シンドラーのリストの時と同じモノクロ映像であったら、もっと評価は高くなるのではないでしょうか?最初の上陸作戦の最後の海岸線の映像で、真っ赤な波と打ち上げられた魚が、上陸戦の真実を表しているように思い、みごとでした。

演技に関しては、満点ですね。特にミラー大尉の複雑な心理状態を演じたトム・ハンクスはさすがです。コンバットのサンダース軍曹だったら絶対にならないであろう繊細であるがゆえのシェルショック状態を見事に演じています。また、SBウイリーのドイツ兵も恐怖の演技もよかったです。捕虜としてつれていくとかすれば、もっと演技が観れたでしょうに。

考証も満点です。銃器・軍装ファンは大満足!第二次大戦型のBAR、革製スリング、アサルトジャケットにガス検知腕章、防水ビニール袋、前期型のアルミキャップ水筒、空挺使用のM1カービン、OT810、初期型シャーマン、20mm機関砲、ケッテンクラート、マーダー3・・・。唯一、T34改造タイガーが初期型と後期型のゴチャマゼなのを除けば、ダントツの考証です。

毎年1回、6月6日には必ず見る映画になりました。

Hawkeye
8点
「プライベート・ライアン」はスピルバーグがWW?Uの映画を撮っているという噂を聞いてから、公開に至るまでの約1年間は、期待が膨らむばかりの楽しい時間であった。 インターネットの急激な普及下という時代環境のお陰もあっただろうが、個人的にはこれほどまでに公開前の予習を万全にして盛り上がって観た映画は今までに無かったのだ。 作品そのものの評価とは関係無く、この作品は金字塔の映画なのだという事を、まず申し上げておきたい。

スピルバーグの作風に関する評価は、その過剰とも思えるサービス精神に関する功罪が正反対の評価に基づいて論じられる事が多く、この作品も例外ではない。 冒頭と最後の老ライアンの登場や、随所にちりばめられたスピルバーグお得意の観客をあっと言わせる仕掛け、それに加えて今回は少々鼻に付くヒューマニズム賛美と、少々展開に無理のあるストーリーが、スピルバーグの語り部としての才能の乏しさを図らずも露呈してしまったといえるだろう。 更に、オスカーの獲得の為に行ったプロモーションのやり方や、お上(米軍)の受けが良かった事などが、皮肉な事にこの作品の評価に胡散臭さまで醸し出してしまったのだ。 なにしろ日本でも文部省推薦映画に真の感動作品があった試しがないのだから。

それでも、皮肉ではなくて私のこの映画に対する評価は高い。この時期に第二次世界大戦映画、それも米軍がボロボロになったオマハ・ビーチを描いて、何の説明も無く映像の力だけで、たった20分間で戦争の狂気、戦争の悲惨さを描いたことは驚嘆に値する。戦争体験の無い世界中の若者が画面に釘付けとなり、悲惨な戦争を疑似体験したのだ。 スピルバーグの「戦略」は一人よがりに終わったかもしれないが、スピルバーグの「戦術」は見事に当たったのだ。

以前から感じている事に、スピルバーグの過去の作品を観ていて、彼の第二次世界大戦に関する思い入れは並大抵のものではないということがある。 ユダヤ人であるという出自による拘り以外の、何か「ミリタリー・オタク」としての素養が彼の作品のあちこちに垣間見れるのである。 いつか本物のWW?U兵器に囲まれた映画を撮りたいというのが、彼の若い頃からの夢だったのではないかと。

モチベーションはなんであれ、この作品で第二次世界大戦の映画がまだこんなに評価を受けるということを大きく世間に示したスピルバーグの功績は誠に大きいと云わざるを得ない。どんなにテレンス・マリックが束になっても、これだけは敵わないのだ。恐るべし!

UKE
7.5点
 SPRは、数々の大規模な映画を手がけてきたスティーブン・スピルバーグが監督をつとめた"戦争映画"という事で、見る前から高い関心を抱かずにはいられなかった。一つは、最高度の映像技術・制作費を投じたであろう戦争描写がどのようなものに仕上がっているか、ということについての率直な興味である。もう一つは、「シンドラーのリスト」でのヒューマニズムや、「ジュラシック・パーク」でのエンターテイメント性に顕著なように、"多くの観衆に受け入れられる事"を前提にしている彼が、戦闘、暴力、不条理といったダークな要素から構成されている"戦争"というものを、はたして描ききることができ、その上で自己の作風と折り合いをつけていくことが可能だったのか、という疑問であった。

 私はSPRを立て続けにニ回見た。というよりも、冒頭のオマハ・ビーチでの上陸戦や、最後の橋梁付近での対戦車戦の余りのリアルさに、思わず時を忘れて見入ってしまった、というほうが正しい。上陸用舟艇の扉が開いたとたん、機関銃の弾幕になぎ倒される連合軍兵士。もはや原型をとどめてすらいない死体で埋まった波打ち際。圧倒的な攻撃・防御力を有するドイツ軍戦車と、生身の歩兵との息の詰まる攻防。戦闘シーンをこれほどまで正確に描写し、見るものに戦争の恐怖や威圧感を追体験させる事に成功した映画は、他に類を見ないであろう。効果音や、背後で流れる音楽も、戦場の臨場感を否応無く高めており、非常に質が高いものであった。SPRを撮影するにあたって、トム・ハンクスをはじめとするキャストが、軍隊式の過酷な訓練を受けたらしいが、彼らの刻々と変化する戦況に対応した演技を見ていると、その訓練の効果は、十二分に発揮されているといっても差し支えないであろう。私は以前、実際にノルマンディー上陸作戦に参加したアメリカの退役軍人が、映画館でSPRを見て卒倒したという、嘘か本当かわからない噂まで耳にした。しかし、ここまでリアルさを追求した戦争描写を目にした後では、そのエピソードにも素直に頷けてしまう。

 また、登場人物の個性の描き方も秀逸だったように思う。もと教師であったミラー大尉、天才肌のスナイパーであるジャクソン、新兵で実践経験のないアパム伍長など、すこしばかり"ありがちな"人物設定ではあるものの、各々のキャラクターがたっていた。そのためか、中盤の小隊単位での移動や、最後の戦車を連携を駆使して撃破していくシーンには、なにか優れた時代小説のような風情すら感じた。SPRでは、"戦闘シーンそのもの"と"そこで戦う独り独りの兵士"を両方とも描ききる事に、スピルバーグは完全に成功している。

 しかし、正直なところ、繰り返し見たにもかかわらづ、上記以外の感慨は私には沸いてこなかった。確かに、リアルな戦闘シーン・秀逸な兵士の描写が揃っていたけでも、SPRは戦争映画の及第点を超えていることは明かな作品であった。だが私は、肝心のストーリーや、映画全体の構成が、それらの長所と釣り合うだけのものではなかったという不満感を、最後まで拭い切る事ができなかったのである。

 "Saving the Private Rian"という原題そのままに、この映画の基本的なストーリーは"4人兄弟の中で唯一戦死していない末っ子を救出して母のもとに無事送り返す"というものであった。しかし、その任務の不可思議さに、私は終始呆れ返ってしまっていた。正常な判断力を有する人物ならば、この任務がいかにバカゲタものであるかを、即座に感じ取らないはずはないだろう。一人の兵士を救うために、八人の兵士のが生命の危険に晒されるのである。それでは"敵兵士をを殺し自国の勝利に貢献する"といった、国家間戦争でのみぎりぎりに肯定されうる、只でさえエゴイスティックな理由にすら拠らない任務になってしまう。また、その任務が遂行される過程で、殺し・殺されたアメリカ兵も、ドイツ兵も、各々の人生を持ち、肉親が祖国にいるという点では、ライアン二等兵とはなんら相違点はないのである。そう考えると、皮肉屋ぶれば、SPRは"一人のアメリカ兵士を救うために、複数のアメリカ・ドイツ兵士が死亡した映画"と言い換えてもいいかもしれない。しかし、ミラー大尉を初めとする小隊は、その任務の不可解さに一時は首をかしげながらも、徐々に自己を正当化し、最後には満足感をもって任務をまっとうしているのである。これはヒューマニズムでもなんでも無く、ただ、"自軍の兵士を救った"という手前勝手なヒロイズムに酔って戦闘・殺人を繰り返していた過ぎない。そんなアメリカ人に無造作に殺されたのならば、劇中のドイツ兵達も全く持って浮かばれない。

SPR以前にも、戦争活劇映画や、共産圏の国策戦争映画のように、"手前勝手なヒロイズム"で塗り固められた映画はたくさんあった。だが、それらは最初から明かに"手前勝手さ"を前提として作られていたものであり、見るほうもそれを判った上で愉しむ事が出来た。しかし、SPRのように、最新鋭の技術、膨大な制作費を使い、リアリズム・ヒューマニズム路線を標榜しておきながら、見せられたのが、ミラー大尉らアメリカ兵士の自己陶酔であったというのでは、あまりにも達が悪い。そう考えると、SPRの中での、ドイツ兵の偏向的な描き方にも納得がいくというものである。スピルバーグは、確信犯的に、相手方のドイツ兵を"非道"弱体"無言"スキンヘッド"といったステレオタイプに収めきる事により、見る者のドイツ兵に対する憎悪を、増幅させようとしたのではあるまいか。そうでもしなければ、ミラー小隊がとった行動には、一片の正義も無くなリ、見る者を彼らの側に惹き付けることは出来なかったであろう。

 どんな言い訳を尽くしても、戦争とは殺人の積み重ねであり、絶対的な悪事である。しかし、そこに国家間・地域間の正義が介在するとき、個々の兵士はその正義のもとに殺人を繰り返す自己の正当化と、殺し・殺される環境の中で非人道的な行為に埋没する自己への嫌悪感のあいだで、問を繰り返す。ヒューマニズム路線をとった多くの戦争映画は、そんな戦争の不条理や、その渦中にいる人間の虚しさを描くために、様々な方向から"戦争"というものにアプローチをかける努力を惜しまなかった。それゆえ、見終わった後には、善/悪、勝利/敗北といった単純な二項対立的な感情には収束しないのが常であり、戦争映画の魅力の一つは、そんなヘヴィーな観後観(?)を味わえる事にあるように私は思う。しかし、SPRを見終わった後の感慨は、テレビの再放送時代劇を見たあとの"ああ、やっぱりね〜"という単調な感情に近いものであった。私は、最後のミラー大尉の達観しきったかのような表情に、怒りすら感じてしまっていた。結局スピルバーグは"戦争"という不条理な行為と正面から向かい合うことができず、中途半端なヒューマニズムに逃げ込み、最後には、それすら"手前勝手なヒロイズム"にすり換えてしまっていたのだろう。別に、はなからB・C級の映画を撮りたかったんなら、それはそれで結構である。しかし、戦争映画のもう一つの醍醐味である、戦闘シーン/兵士の描写が、かってないほどにリアルなものであっただけに、それを支えるストーリ/構成が決定的に重みや現実味を欠いていた事が、私には残念でならない。

Carlos
7点
「プライベート・ライアン」観ました。噂通り戦闘シーンはキてますね。気の弱い人には向かないな。俺なんか、絶対、戦争には行きたくないと思ったね。特に、上陸用舟艇の最前列は勘弁してほしいね。舟艇のハッチを丘に向けて開けたら、それゃドイツの機関銃にねらい撃ちされるにきまってんじゃん。
俺はドイツ軍に言いたい。
おまえら、「史上最大の作戦」のときはそんな汚いことしなかったじゃんかー!

とにかく、血はでるは、手足はもげるは、内臓は飛びでるは、とことんリアル。だけど、スピルバーグさんよ。あんた、こうゆうの嫌いじゃないね。俺は、覚えてるよ。ちぎれた手足や血塗られたビーチは「ジョーズ」で、内臓フェチは「インディ」で猿の脳味噌ケイト・キャプショーに食べさせたり、あんたいっぱい前科があるからね。でもまあ「戦争映画の虚飾を剥いだかつてないリアリズム」ってことにしといてあげるよ。

戦闘シーンもすごいが、曇天のグレーとノルマンディーの丘(実際はアイルランドか?)の深い緑、この二つの対照を鮮やかにフィルムに定着させたカメラは秀逸。市街での光のあて方なんかもいい。録音もいいぞ。これは、ビデオじゃ味わえない。絶対、音響設備のいい劇場で見るべきだろう。

ところが、人間ドラマになると突然駄目になる。台詞からなにからなんか上滑りなんだよね。だから「太陽の帝国」以来、どうもシリアス系スピルバーグは見たくなくて、「シンドラー」さえ見てないんだが、いつまでたっても演出うまくなんないねー。(と自分の怠慢をスピルバーグのせいにする)だってさー、戦争の不条理という点では「コンバット」の方がはるかにすばらしいぜ。見つかったと思ったらライアン違いだったシーンなんか、みんなここ笑うところかどうか迷ってたよ。レーダー基地襲撃でひとり死なせて、トム・ハンクスが人知れず泣くとこなんかもなー。もうちょっと何とかなんないの。クリント・イーストウッドならもっとうまく撮るぞ。そうだ。監督イーストウッド、助監督スピルバーグで撮れば、きっともっといい作品になったに違いない。(トム・ハンクスをイーストウッドに変えろとまでは言わないが)

それから、君がユダヤ人として、ご先祖の被った悲劇に対する憤りは「インディ」以来もう十分わかったから、反ナチ汎ユダヤのパンチを繰り出すのはもう止めてくれ。(それとも、それは、ハリウッドを支配するユダヤコネクションへのへつらいか?)墓堀のドイツ兵なんか哀れで見ていられない。しがない一兵卒をあそこまでいじめなくても。ドイツ人が見たら怒るぞ。それに、ユダヤ人の将校や兵はいても、全編を通して黒人を一人も見なかった気がするが、ちょっと変では?

つくづく、イーストウッドだったらなー、と思っていたら、ライアン救出と似た映画を最近みたことを思い出した。そうそう。ペキンパーの「ワイルドバンチ完全版」を昨冬に見たんだった。仲間を救出に行ってみんな玉砕する点では同じですね。「ライアン」ほどのリアルさはなくとも、かの有名な銃撃戦は何年たっても色褪せていない。しかし、こっちは映画全体としてペキンパーの男気がひしひしと伝わってくるところが「ライアン」とは大違いなんだな。「ライアンひとりのために全員が云々」とかみんなぶつぶつ言ってるけど、男なら「ワイルドバンチ」のウィリアム・ホールデンみたいに、一言「レッツゴー」だ!

うーん、また「許されざる者」や「ワイルドバンチ」を見たくなってきた。結局、スピルバーグの最高傑作って「ジョーズ」か「激突!」じゃないの。その後正しい道を歩めば、ホークスの後継者としての道もないわけではなかったのに、アカデミー賞を欲しがるようになって道を誤ったとしか思えない。内臓どろどろ変態映画でもなんでもいいから、スピルバーグらしさを出せよー。(タランティーノみたいにさ!)よそ行きの「うすっぺらなヒューマニズム」を振りかざして映画撮ってたんじゃ、巨匠への道は遙かに遠いぜ。

08/15
7点
戦争映画を変えた、という惹句で宣伝された作品である。

確かに冒頭のオマハ・ビーチの惨状は、それまでもいろいろな書籍には登場しては来ていたが、改めて映像として再現されるとかなり衝撃的なものとなった。弾雨ということばがふさわしいドイツ軍の機関銃による弾幕は、見るものを戦場に引きずり込んで離さないものがある。ここまでは、まさに戦争映画の表現にとってのあるエポックであると言っても良いも知れない。但し、映画史上全く初めてということではないので、若い方々には先人の努力にもご理解を戴きたいと思う。

さて、上陸してからであるが、これが全く「コンバット」の挿話の集成という感じの展開になってしまう。狙撃兵同士の対決、レーダー基地への攻撃などスピルバーグの演出はケレン味たっぷりで、見る者を引っぱっりはしても感動させるには至らない。
終盤の武装SSとの市街戦。改造ティーガー戦車はよく出来ていたがそれまで。鬼神のごとき米兵と、顔の見えないドイツ兵との戦闘。最もがっかりしたのは最後の「デウス・エクス・マキナ」、P51の登場である。この演出の為にこの映画は品位を失った。

最後に、全員が坊主頭のドイツ兵に対してはスピルバーグの明確な悪意を感じずにはいられない。史実ではなく、ネオナチを連想させるためとしか感じ取れなかった。映画としての瑕疵と言わざるを得ない。

Unteroffizier
7点
私にとってこの映画は大きく2つに分けることができる。ノルマンディー上陸のシーンとそれ以降である。
まず、上陸シーンであるがこれは大変素晴らしいと思っている。このシーンだけなら文句なく10点である。特に国家の正義とかヒューマニズムなどまったく問題にせず、ただ自分が生き残るために敵を倒すための戦いとして描きえている点は評価したい。上陸作戦は後退する場所がなく、生き残るためには目の前の敵を殲滅させなければならない。守る側も一度敵に橋頭堡を築かせるとそこから敵の援軍がなだれ込み、今度は自分が倒される側になるので自分が有利な内に敵を殲滅せねばならない。そういった切羽詰まったギリギリの中で戦っている兵士の姿が描きえており、いいと思う。残虐なシーンについては、この傾向は最近の戦争映画のトレンドのようでもあり、もともと戦争自体が残虐なものであるため、この傾向を非難することはできない。私自身は観る前はもっと残虐なシーンを想像していた。ただ、スプラッタシーンばかりに力が入り、転がっている死体がちょっと前までは生きていたんだという表現を加えてもらえればもっと無情感がでたのではと思う。

さて、問題の上陸以後のシーンであるが、これがなんともだるく不可解なシーンが多い。カパーゾは撃たれるシーンではなぜ狙撃兵が一人とわかったのだろうか?もし二人居たらジャクソンは間違いなくあの世行きである。
レーダーサイトの攻撃など不要であり、ミラー大尉の戦術的センスを疑ってしまう。(あれだけ目立つのだから、本隊が奇襲を受けることはなく、迫撃砲で始末すれば終わりである。)まあこのようなくだらない任務に就かされるのだから直属の上司の評価は高くなかったはずである。ミラーが自分の前の職業が教師であることを告白するシーンでは、私は「それがどうした」と思ったものである。そんな陳腐なセリフで納得するような兵士なら指揮を執るのも楽である。少なくとも私のようなひねくれた日本の現代の人間では納得はしないと思うが。

そしてドイツ兵の描き方はまるでスチームボートウィリーをはじめ戦争中に戻ったかのような偏向ぶり。ウィリーも自分が生き延びるためには敵兵の靴もなめるかの勢い。しかもウィリーが釈放後ドイツ軍に戻っているのだが、なぜドイツ軍に戻ったかを描かなければ、彼はただの裏切り者である。これらを当時の米兵の視点として描きえれば良かったと思うがそういう意図は感じられない。
そして丸坊主のドイツ兵。考証的には明らかな誤りであるが、それ以上に監督の悪意を感じてしまう。まるで人間扱いされていない。米兵たちもライアンを救って胸を張って帰ろうという割には、ドイツ兵を殺すことには良心の呵責もない。自由主義体制のアメリカ人は生きる権利はあるが、ナチスの体制下にあるドイツ人には生きる権利を認めないと言う訳か?この辺はとても偏向したものを感じてしまう。まだ自分が生き残るためにメリッシュを刺殺した独SS隊員の方が遙かに正直である気がする。(しかも彼は自分に敵対しようとしなかったアパムは見逃しているのだ。)

そして何より私が最も納得できないのが「ライアンを救って胸を張って帰ろう」というお題目である。今までも戦場におけるヒューマニズムを描いた映画があった。例えば「プラトーン」のエライアス軍曹などその典型であろう。しかし彼の善も民間人に対してであり、敵兵に対しては非情であったし、味方に対しても自分を犠牲にしてまで救うことはしていない。ライアンは米国軍人であり、しかも空挺隊員であるから志願兵である。ドイツ兵は彼を見つけると撃ってくるし、ライアンだって容赦なくドイツ兵を殺すはずだし、現にそのシーンもある。もちろんライアンを救うと言うことは戦友愛である。しかし復員して「ライアンという兵士を救うために俺は命をかけた。彼を救うためにドイツ兵をバンバン殺したよ」と胸を張って言える米国社会って実は軍国主義なのではと思ってしまう。彼の正義は米国のための正義であり、国境を越えた人類愛ではない。それをヒューマニズムと勘違いしてしまったところに大きな問題があると思う。

戦争映画とは戦争という極限状態の中における人間を描くものである。その状況を演出するために上陸シーンはあったはずである。もしこの極限状態においてもヒューマニズムを保とうしている人間が居るのであればなぜそうしようとしているのか、敵という人間を殺していくことについてどういう折り合いをつけているのかという部分まで描いて欲しいと思う。リアルに描くのであれば徹底的に、最前線の兵士の心情にまで踏み込んで描いて欲しい。格好はリアル、ストーリーはおとぎ話では後味が悪い。

所詮この映画はアメリカ人の、アメリカ人による、アメリカ人のための映画でしかない。外見だけはリアル志向で作ってあるにもかかわらず、兵士の内面に立ち入れないでおり、ただ中途半端な嘘臭いヒューマニズムで描かれた印象を拭えない。たぶんオスカー狙いで、さらに復員軍人やお上にもしっぽを振ってしまったため、このような結果になったのではと思う。せっかく素晴らしい上陸シーンを作り、俳優に軍隊並の訓練を受けさせ、さらに考証に力を入れて当時の車両の再現まで行っているのにとても残念な気がする。

ただ戦争映画ファンを増やしたという功績は無視することができない。これだけは認めよう。

zono
6点
どのようなスタンスでレビューを書いていいものか悩む。大方のレビューはおそらくベタ誉めだろう。ヒネクレ者の自分は否定的なレビューを書くこともできる。劇場でも心のどこかにそのような想いがあった。自分は戦争映画になにを求めてるのか?いや、そもそも映画になにを求めてるのか?そう考えさせられたのを思い出す。

血の匂いさえ感じられるような冒頭のオマハ・ビーチでのシーン。降伏する無抵抗の独兵を笑い交じりに撃ち殺す米兵達。

細かいシーンについての感想は省く。どれもいろいろな意味でリアルなのであろう。
敵味方の区別なく誰もが銃弾に怯え、血を流し、死を恐れる。戦争と言う極限状態で人はいかに振舞うのか。どのように人間らしくいられるのか。

劇場でこの作品を観たときも、そして今回レビューの為にビデオで見たときも同じように考えさせられた。

しかし、それ以上に自分の頭の中に残るのは神への祈りを口ずさみながら引き金を引く左利きの狙撃兵、ジャクソン2等兵に対する「格好イイ!」という大人気ない感情と、アパム伍長に対する憎しみともとれる憤り、それにライアン大尉の死に対する不満だけなのです。それだけ・・・。

リアルであることにどれだけの意味があるのだろうか?自分はこの作品を観てある種の戦争映画の限界が見えたような気がした。幼い頃から自分が見ていたような類の戦争映画はもう無理なのかと。ワクワクするような、ドキドキするような、そのような戦争映画はもはや過去のものなのだろうか?

自分は戦争映画になにを求めてるのか?いや、そもそも映画になにを求めてるのか?

Marmel
6点
 6点という評価は厳しいように思われますが、戦闘シーンのリアルさは、間違いなく今後「戦争映画を作るのに意識されすぎて、戦争映画が作られるときに、プライベート・ライアンと比較されると、絶対にかなわないから、作るのをやめよう」ということが起こりそうだということと、ドイツ兵が全てスキンヘッドということがあげられます。
 それだけ近年にないすごくいい映画です。

戦闘シーン 
 個人的にはティーガー戦車をしとめたアメリカ兵が、手押しで現れた20ミリ機関砲で、首が吹き飛ぶ、足がちぎれるシーンがすごく印象に残りました。
 20ミリ機関砲の間抜けながら(ごろごろ手押しで動かすところは滑稽)巧妙に運用するところが、なかなかの演出だったように思えます。
 各種ドイツ軍車両もほぼ完璧で、要塞内で焼け出されたドイツ兵、空から降ってきた火炎瓶で火だるまになる自走砲の乗員、火炎放射器の引火に巻き込まれた兵士は、気の毒でした。

出演者
 ジャクソン上等兵のちょっと大きめのヘルメットと狙撃兵としての腕は魅惑的でした。鐘楼に潜む独狙撃兵のスコープを打ち抜くシーンは非現実的ですが、見ていて綺麗でした。
 ホーバス軍曹は、典型的な軍曹ですが、戦場での冷静さは、スタイナー軍曹とは違った魅力があり、鉢合わせしたドイツ兵とのヘルメットの投げ合いなど、いい味だしていました。

その他
 場面ごとに、ドイツ語が使われていましたが、字幕がほしかった。(映画そのものより、配給会社に言いたいことですが)
 上陸直後、何か叫びながら降伏したドイツ兵は、フランス語のような響きだったように思えますが、ちょっと背景がわからない。
 全体的にはアメリカ中心すぎてドイツ兵が軽く扱われていることもあり、すごい映画ですが、評価はやはり6点くらいが妥当でしょう。
 次回作が出るなら期待したいものです。

赤男爵
6点
戦争を徹底したリアリズムで描こうとした映画として強烈なインパクトを与えた。
数々の戦闘シーンは今までのどんな戦争映画をも超越する凄さを持っている。中でも冒頭の上陸作戦のシーンはまるで金縛りにあったように画面に引きつけられ凝視し
た。MG42の連射の振動音に薬莢が地面に落ちて立てる金属音が混じる。そして水中を走る機銃弾なんて今まで誰も想像しなかったものを見せてくれた。次に素晴らしいのは、ハーフトラックが花畑の中をやってきたと思うと左右から挟撃され、徹底的にやられるところまでをワンカットで一気に撮りきったシーン。雨中での狙撃兵同士の一騎打ちは緊迫感があるが、建物の外壁が崩れて米独両軍が立ちすくみになり怒鳴りあうのはそんなアホなと思ってしまう。最後の市街戦は待ち伏せとはいえドイツ軍機甲部隊が小火器しか装備していないレンジャー部隊と空挺部隊にいいようにやられるのも首をかしげざるをえない。
納得いかないところは他にもある。第一はミッションについて。そもそも本作の大前提となる一兵卒を救出せよというミッション自体が、アメリカの平等主義のもとであれば誰の命であれ尊さに違いはないはずだから不条理である。アメリカに息子三人を捧げた母のため?そのミッションのためにまた犠牲者がでる。結局ライアン自身が救出を拒否し、映画は当初のミッションを否定して話を進めていってしまう。
エンディングも問題含み。今までの歩兵によるあらゆる防衛努力を超越した絶対的な力、スピルバーグお気に入りの蒼穹の天馬P51が突然飛来し、迫り来る戦車をあっさり屠ってしまう。最終仕上げを僥倖に任せるのはストーリーのぶち壊し。それとも天は必死で努力する者の味方だとでもいう教義めいた独善的主張なのか。
映像についても注文がある。どれほど高度な技術なのかはよく分からないが、リアルさ追求のあまり、オマハビーチの手ブレ画像のほかにも光がレンズに入ってしまっていたり、コマ落し的な表現や、素人が撮ったビデオみたいな露出過多のシーンなど見づらい画面が多くなってしまったのは決していいとは思わない。
登場人物についてはまず問題なのが主役のミラー大尉。適切な命令の発出でリーダーシップはあるにはあるが、謎で覆われていたのが単なる元高校の先生では肩透し。手が震えたり、一瞬聴力が無くなったりするのも含めて英雄でもなんでもない一アメリカ市民ということを表そうとしていたのだろう。それにしても部下ならびに自分自身の戦死について責任が取れていないのも辛いところ。アパム伍長については日本人から見ると共感を持つという意見が多い。しかし実のところは最後の戦闘場面では自分の役目を果たすことができず、右往左往する弱虫無能ぶり、結局仲間を失う原因を作るためだけに存在しているという、いわばアメリカ市民として最もあってはいけない姿、つまりミラー大尉やライアン二等兵の対極なのである。
つらつら書いてきたことに対して反論は多々あることでしょう。赤男爵自身この映画のよさが解からない未熟者なのかもしれません。総合点は6点どまり。

mimi
5点
この作品が好きなかたにはたいへん申し訳ないが、私的にはダメだった。
息子たちが全員戦死しては母親が気の毒云々から始まるストーリー展開もかなり無理があるというか・・・。
それが史実だとしてもそういう黒人家庭や日系人家庭は現実にたくさんあった訳で。
何故この白人だけがそういう優遇措置をしてもらえたのか?これを考え始めたら
もうまったくこの映画に感情移入できなくなってしまい、
たったひとりを捜索するのに何人犠牲にすればいいのかと腹立たしくなるばかり。
それが戦争の悲惨さだ、愚かさだと言われても、はいそうですかと素直になれない。
オープニングの大戦闘シーンも迫力はあるが、これ見よがしでなんとも・・・
う〜ん。反戦とはまた違った非常に気分の悪い苛立ちを覚える映画。
スピルバーグがこの映画で何を言いたかったのかぜんぜん理解できない。

ペクトさん
5点
戦闘シーン、見ごたえあります。お金をかけたって感じです。
しかし、戦争映画好きの私が最後まで乗れなかったのはなぜか?
それはドイツ人を邪悪な存在としか見れない
スピルバーグの目線の小ささが鼻についてしょうがないのです、時に勇敢で人間的なアメリカ兵、卑屈でずるく情けないドイツ兵、とても偏った描写が全編にちりばめられています。
画一的でドラマが薄い、人間的リアルさが無い、ハリウッド的ご都合主義。
自分がユダヤ系だという監督のアイデンティティーも尊重しますがヒトラーユーゲントのナイフでユダヤ系米兵をドイツ兵が刺殺するシーンは逆に恣意的でいやらしく感じました。
私がこの映画を観て感じたのはプロパガンダ的メッセージのみで、私が戦争映画に求める「感動」「カタルシス」のような物は一切ありません。
一見テーマは尊大なようですが、裏を返せば非常に能天気で、単純な論理の元に物語は展開しています。
そういう意味ではこの映画は「現代戦争映画の金字塔」の様に言われますが私にとっては「つまらない映画」の一つです。
「戦闘描写や兵器の再現がすごいっ!」という意見が多数ありますがお話の論理的には、あの愚作「パールハーバー」とそう違いはないでしょう。
(でも20m機関砲見たさにDVDを買ってしまった・・・・)
辛口ですが戦争映画ファンとしては許されない部類の映画と私は感じておりますので書かせてもらいました。

VC
4点
今まで見た戦争映画のなかで最低の部類にはいります。認めるべき点はやはりオマハビーチでの戦闘シーンですね。飛び来る弾丸、飛び散る血しぶき、吹っ飛ぶ肉片、劇場で見て自分が本当に戦場にいるようでした。こんなシーンは過去のどんな映画を探してもありません。まあこれで2点。
最後の市街戦のシーン、ティーガー戦車がキャタピラ音をたて近ずいて来る。この重低音、呆気にとられました。重機関銃に撃たれ粉々に吹っ飛ぶ米軍兵士。これも呆気にとられました。これでさらに2点。つまり戦闘シーンだけですな。
ひどいのは、スピルバーグがユダヤ人のため、己の私念むき出し。ドイツ軍弱いは、馬鹿だは、一個師団が米軍十数名に負けるは、アメリカ万歳でメチャメチャむかつくぞボケ。あげくの果てに無線で空爆要請してないのに、どこから来たんだ。あのアメリカンエアフォースは、まあ戦闘シーンはともかく、内容は最低でしたね。