『戦争のはらわた/Cross of Iron』

ラピッド・フィルム=EMI製作(1977年)
作品時間133分

製作
ボルフ・C・ハルトビヒ

監督
サム・ペキンパー

原作
ウイリー・ヘンリック

脚本
ジュリアス・J・エプスタイン

撮影
ジョン・コキロン

音楽
アーネスト・ゴールド

出演
ジェームズ・コバーン/マクシミリアン・シェル/ジェームズ・メイソン
センタ・バーガー/デイヴィッド・ワーナー

 

[ストーリー]

'43年ロシア戦線。一時はスターリングラードまで侵攻したドイツ軍も、今やソ連軍の猛反撃にあい、後退の連日だ。最前戦を死守するブラント大佐(ジェームズ・メイソン)の連隊は、地獄の日々であり、兵隊達には祖国の栄誉も何もなかった。生きのびるための戦いだ。ある日、新任の中隊長としてストランスキー大尉(マクシミリアン・シェル)が派遣されて来た。貴族の末裔で名誉欲が強く、ヒットラーから贈られる“鉄十字章”の栄誉獲得に執念を抱いている男だ。ブラント大佐と副官キーズリー大尉(デイヴィッド・ワーナー)は、この男をみて溜息をついた。なぜなら、連隊一の戦闘能力を持つスタイナー伍長(ジェームズ・コバーン)と性が合いそうもないからだ。襲撃作戦の翌日、ストランスキーはスタイナーの功績を上申し、彼を軍曹に進級させる。十字章を手に入れるには彼を味方にする方が得だからだ。だがスタイナーは、進級など俺には関係ないという。数日後、スタイナーは重傷をおい、入院中に鉄十字章が送られた。しかし、彼は喜ばない。むしろ慰問に来た将軍の尊大な態度にハラがたつ。看護婦エド(センタ・バーガー)との愛もおき、再び彼は前線の友の元へ戻っていった。再会したストランスキーは、鉄十字章は俺のおかげでもらえたのだと、恩着せがましく言う。そして今度は戦死した中尉に書かせたデッチ上げの報告書にスタイナーの署名をさせ、ストランスキーへの鉄十字章を請求させようとした。ことわるスタイナー。やがて、退却命令が下ったが、頭にきたストランスキーはスタイナーを前線に出させ、彼を戦死させようとした。彼が死ねば、彼の署名なしでも報告書は有効になるからだ。だが、彼は死なない。ソ連兵に化けた彼の小隊は、やがてストランスキーの策略で味方に機銃掃射されてしまう。愛する部下を殺され怒り狂ったスタイナーは敵の砲火の中あまりの激戦のため逃げようとするストランスキーを追いつめる。「鉄十字章を見せてやる!ついて来い!」。初めての激戦におののくストランスキー、高笑いするスタイナー。今彼らの戦いが始まろうとしていた。

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[完全版]
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レビュー人数
12人
平均点
9.1点

 

SAM北京派
10点
最も好きな映画です。中学生の時TVで観てあまりの強烈な映像に絶句しました。あの時から20年、評価は全然変わっていません。また、これを超える映画はいまだに出てきていない、と確信します。
考証、その他専門的な事は他の方にお任せしますが、私のお気に入りは戦場に燻る硝煙、焼けた砂、こっちまで臭ってきそうな汚れた軍服、狭くてむさ苦しいスラングや塹壕・・・全てがリアル。薬莢が飛び出す様まで見せるスローモーション映像。登場人物の性格も多彩で実に魅力的。特にスタイナー小隊のメンバーは「ドイツ兵も血の通った人間」という当たり前のことを初めて実感させられたものです。各自に素晴らしく良いシーンが用意されており、一つ一つが印象的。ラストのゾクッとさせる終わりかたも秀逸。当たり前のラストを期待しても、ペキンパーの破滅の美学が全て裏切ってくれます。おそらくこの映画、こういうの好きな人達が目いっぱいこだわって作ったんでしょう。観る側も好きで観る奴ばっかり。つまり、マニアの、マニアによる、マニアのためのとびっきり上等な映画といえるでしょう。私は文句なしの最高傑作だと思っています。

Unteroffizier
10点
自分自身、この映画に満点をつける資格があるのか疑問ではあるが、私にとってのベストの映画であるので満点とする。私自身戦争映画はこの映画を越えられたか(またはどこまで迫れたか)が基準となっている。
さて、この映画を評価する点は以下のとおりである。

1.激烈な戦闘シーン
とにかく戦闘シーンは凄まじい。初めて観たとき、それまで観た映画の戦闘シーンが緊張感のないお遊びのように感じられた程である。この激烈な戦闘シーンはスタイナーたちが置かれた過酷な状況を演出するためのものであるが、ほんのちょっとしたミスや油断、または不運によってバタバタと死んでいく。そしてペキンパーはその倒れていく兵士たちをスローと細かいカット割りで克明に描いていく。交錯した戦場の中で受け止めなければならない現実してである。この危険な戦闘シーンを再現するのにプロのスタントマンが、たった5人しかいなかったのは驚きでもある。血糊の飛び方は決してリアルとは言えないが(たぶん)、スローモーションという手法にあった、強く印象に残るものであり、美しささえ感じさせるものであった。そして敵味方双方の様子(死に様)を交互に映し出すことにより、戦争は殺しあいであり、この不幸な出来事は全て人間が引き起こしていることを感じさせてくれる。

2.詳細な戦闘の再現
第1次工場前攻防戦におけるマイヤー少尉の活躍は強く印象に残った。浮き足立つ兵士を身を挺して持ち場に戻し、塹壕を駆け回って戦場の状況を自らの足で確認、的確な指示を出す。そして先頭に立って戦う姿はこれぞ戦闘指揮官という感じであった。私はシミュレーションゲームをするのだが、戦術級ゲームの傑作「スコードリーダー」の指揮官ユニットをそのまま再現したかのようであった。実際の戦場でも優秀な指揮官はこういうスタイルで戦う。特にドイツ軍歩兵のその強さは下級指揮官に負うところが大きい。また戦場における正しい拳銃の使い方を再現したことも評価される点であろう。拳銃がその威力を発揮するのは白兵戦や5メートル以内の近接戦闘であることをクルーガー伍長が見事に再現している。こういった部分の再現についてはドイツ軍兵士として東部戦線に従軍し負傷した経験のあるプロデューサーのヴォルフ・ハルトヴィッヒの意向が絡んでいるかもしれない。また、ペキンパー自身も製作前に独ソ戦のドキュメンタリーフィルム(ドイツ・ソ連双方の立場から)を数多く観ており、その経験も役に立っていると思う。

3.スローモーションと細かいカット割り
ご存じのとおりペキンパーといえばスローモーションと細かいカット割り。この映画ではその真骨頂とも言えるほど用いられている。特に戦闘シーンはこれによって構成されているといっても過言ではない。他の映画(特に邦画)ではスローは他のシーンから浮いてしまいがちだが、この映画では細かいカット割りを用いることによってスピード感を損なわず再現することに成功している。スローと気づかないシーンがあるくらいである。その用いられた数の多さと編集の巧みさからいって、ペキンパーアクションの最高峰とも言える。

4.男の誇り(プライド)をテーマとした映画である
ペキンパーの映画を観ていると共通するのが、主人公は置かれている極限状態の中で、いかに生きたを描いていることである。そしてその行動の善悪については問うことはせず、自分が誇れる自分であるかをクローズアップしているのである。それはスタイナーとストランスキーの関係が単なる善悪の対立ではないことでもわかる。この件については主役を演じたジェームズ・コバーンが語っている。「エプスタインの脚本(最小の草稿)には、いわゆる善玉悪玉的な構図しかなかった。それはサム(ペキンパー)がこの作品に描こうとしているものではない。誰が善人で、誰が悪人かということではないんだよ。ただ、戦争という混乱状況と、ドイツ軍内部のライバル関係のさなかに、自分たちの運命と懸命に戦ったひとにぎりの人間たちを描いているだけなんだ」(G・シモンズ著「サム・ペキンパー」より引用)そのテーマを凝縮しているのがラストシーンである。スタイナーはストランスキーを殺すことができたのだが、殺すことはせず、自分と共に戦場で戦うことを要求する。ドイツ軍は敗走しかけており、ブラント大佐自ら戦場で戦わねばならない絶体絶命の状況下、ストランスキーもスタイナーを殺し鉄十字章をつけて帰国するチャンスがあったにもかかわらず、スタイナーと共に戦う道を選ぶ。人は極限状態に陥ったとき、平和時の仮面は剥がれ本性むき出しとなる。その状態においてストランスキーという卑怯者においても、自分自身への誇りを捨てることはできなかった。所詮鉄十字章はスタイナーのいうとおり鉄のかけらに過ぎず、鉄十字章を誇るのではなく、鉄十字章をつける資格を持つ自分を誇るのだということに気づいた。スタイナーもそれを見透かしたかのように「鉄十字章がどんなものか見せてやる」と語る。それは鉄十字章を実力で獲得した自信のあらわれであり、自分自身への誇りでもある。そういった意味においてスタイナーとストランスキーは表裏一体の存在とも言える。スタイナーは映画の冒頭、銀線の入ったエリを立て、目立つ肩章をはずしているのにもかかわらず、鉄十字章をはじめ諸々のピカピカの勲章を着けて登場する。彼とて自分を鉄十字章をもって権威づけているのである。しかし、ストランスキーの登場によって、自分のいやな部分を見せつけられ、そういったことでしか誇示できない自分と軍人のあり方に嫌気がさし、勲章をはずし、迷彩アノラックに着替えたのではないか。ストランスキーにとっては反抗的で扱いにくい存在であるが、自分に誇りを持ち、部下からも信頼を勝ち得ているスタイナーは憧れの人物であったに違いない。だからこそラストで自分のプライドを取り戻し彼について戦おうという気になったのである。そういった意味においてペキンパーは「人がもつ自分自身へのプライド」というものを信じていたと言える。

ここまで長々と書いてきたが、正直言ってまだ書き足りない。もう少し時間が欲しい。半年前にメッセージボードにおいてスタイナーの勲章について語ったが、その際は中途半端に終わってしまった。このときご意見いただいたF・J・カプートさんとNANAさん、ハウプマンさんにはこの場を借りてお礼を言いたい。今後もCOIのBBSにおいて気づいた点、感じた点を記していきたいと思う。この映画納得いかない点、不可解な点がまだ少なからずある。こういった点が少しでも解明できればと思っている。
この映画について言えば、不可解な点はあるにしてもそれをカバーして余るものにあふれており、私にとってベストの映画である。戦争映画
を観る際はこの映画を越えたかが基準になっているといったが、しかしUボートとプラトーンが同レベルに迫っているだけで、この映画を越えるものにはまだ出会っていない。

Shawshunk
10点
 それにしてもこの傑作の邦題「戦争のはらわた」とはなんたるタイトルであるか。冒涜以外の何者でもない!ペキンパー=バイオレンス、残酷という偏見の産物だ。この映画史上まれにみる傑作はじつに多くの魅力に満ちている。
1 その意匠。戦争の残酷さなどという紋切り型ではない。戦争が残酷なんてのはあったりまえのことでそれをお涙ちょうだいで描くのが日本の戦争映画だ。ここに登場する奴らは実に人間臭い。戦争は嫌いだが、任務に就けばとことんそれを遂行してしまう男たち。やるしかないのだ、奴らは。戦争とはそういう状況なのだ。主義も主張もすべて飲み込んで「敵を殺す」ことに全力を傾けざるをえない、その生き方しかないのが戦争なのだ。こういったやり場のない情念が画面に叩きつけられている。その意匠(テーマ)自体がずば抜けて優れている。

2 その戦闘シーン。これほど戦闘のディテールが描かれた映画かあっただろうか。様々な兵科からなる軍隊をそれぞれの役割で活写した映画があっただろうか。以下、羅列したい。

・ロシア迫撃砲隊殲滅手榴弾とワルサーの使い方。スローモーションが冴える。(MP40のマガジンチェンジは最高!)
・迫りくるT34/85の動きとその装填と排夾。まれにみる「生きた戦車」の動き。
・対戦車砲PAK75の絶望的な戦闘。防御を持たない兵の悲しみ。
・白兵戦の状況。銃剣の恐怖。やはりワルサーの効果的な使用と排夾。
・ロシア対戦車銃の機銃座破壊。珍し!
・あまり調子の良くない(作動の堅い)MG42。
・伝説的なPPSHの連射と降り注ぐ薬夾。無骨だが信頼できるロシア兵器。
・マキシム重機から流れ出る冷却水。
その他みなさんご存じの通り。

3 俳優たち。コバーン兄貴(?)は戦争映画史上最強のキャラ。惚れるぜ。シェルの旦那はその血筋で勝負。イヤラシサいっぱいの演技は見事。
メイスンご隠居はご苦労様。昔のロンメル役がなつかしや。MP40の堂々の連射、さすがです。ワーナー君はミスキャスト。タバコばっかりすってどーすんだ?ゼンタ姉御、まだまだいけますぜ(?)。その他無名の俳優たちがいい。おっと、忘れちゃいけないペキンパー永遠のテーマ「子ども」。あの子役が撃たれたときの衝撃。スタイナーもびっくり。

 それにしてもあの「スタイナー小隊」、いまごろどうしているでしょうね。コバーン兄貴はアカデミー賞にノミネートされちまったし・・続きを作るなら今だ!と思いませんか。監督は・・・ウオルタ・ヒル以外に誰がいる!得点は10点!

祥優
10点
「プライベート・ライアン」から戦争映画にころびましたものですから、一気に昔の作品を見たとき、いろんな感銘を受けたんですけど、この作品はちょっと別格でした。
「SPR」に先立つこと20数年、そしてドイツ軍の一小隊を主役に捕らえたという点では…ほんと生まれてくる時代が早すぎたような、素晴らしい作品ですよね。冒頭のシーン、記録映像と勇ましい音楽と、やさしい子供の歌声…最初見たときはわくわくだったんですけど、二回、三回目になると…この先の惨さ残酷さ非条理さを象徴している場面に感じてきて…どきどきものになりました。
スタイナー分隊の面々は、J・コバーンも若くて渋くてかっこいいし、汚いけど、それがベテランぶりを印象強くしていますよね。あっという間に殺されるソ連兵…敵役のソ連兵にしても、最初に捕虜になるきれいな少年から婦人兵まで、人間として登場するし…そこまで考えてたら何て奥行きの深い映画だったんだろう、とか思ったりして。また少年と婦人兵については改めて書くとして…
「MESSEGEBOARD」や「ベストキャラクター」にも、たびたび登場する、あの、スタイナーがマガジンを放るシーンや、サイドカーで敬礼とともに煙草を捨てるキーゼル大尉のシーンなんかは、やっぱりかっこいいっていうか、しびれるというか、なんていうの? 言葉にならない、ため息をもって見てしまいました。何度も。そんな、単純な私があっさりしびれるシーンもあちこちあるんですけど、クリミア戦線?の凄惨なドイツ軍最前線の状況が、よく知りもしないくせに、よく判る?感じ。よく戦争映画のビデオのパッケージに「圧倒的なドイツ軍を相手に…」とか何とか、書いてあるけど、その文句は44年以降の西部戦線では全く似合わないと思うし。だから圧倒的なソ連軍と戦うドイツ軍って図式が、そうだよねって感じでした。敵中突破するスタイナー分隊のシーンは、SPR以上に緊張感と凄惨さを感じました。SPRのそれは、ちょっと牧歌的というか、きれいなシーンでもあったのに対しスタイナー分隊のは、生と死の狭間で、それでもふてぶてしくというか、にやりと笑ってというか、そういう骨太のベテラン兵士の姿を見せてくました。そんな中で新参者の二人は、その最後の場面で「浮いてた」んだなって。でもそれまでは、新兵でも党員でもちゃんと戦闘訓練受けた兵士だったと思いました。泣きながらディッツ二等兵を刺す若い婦人兵、刺されたのに「怒らないで」とスタイナーに告げて絶命するディッツ。婦人兵からすれば弟みたいな、ディッツの最後は、それでもおかしな感じだけども、人間らしく死ねたんだな、とか。戦場でそれが大事なのかどうかは、当然ながら判らないけど。そして怒りとともに置いていかれるきざな党員の兵士。こっちも別の意味で人間らしく死ねた?憎悪の対象になって。自らが招いた、報いですから。最後の「ディマケイション」のシーンは、やっぱり涙無くしては見れない。体が震えるのを感じる。そしてスタイナー軍曹の怒りと一体になる。おかまの中尉が(中尉でしたっけ?)撃たれるシーンに、スローモーションで弾が当たる度に、怒りが叩き付けられているような…スタイナー軍曹と、私の。最後に衝突するストランスキー大尉とスタイナー軍曹、やっぱり、やっぱり撃ち殺してほしかった。少しでもストランスキーのプライドを残してほしくなかったです。だから、この作品は、乱戦の中、捕虜になってずたぼろになって朽ちていくストランスキーと、生死不明で行方不明になるスタイナー軍曹で、私の中では終わりました(ほんと勝手ですよね)パート2なんて、昔の祥優ならともかく、今の祥優は皆様と同じ、怒りなくしては見れなくなっちゃった(爆笑)だからもう見ない。余裕なくなってしまいました。
あれあれ、内容の割に長いだけのレビューになってしまいました。皆様のレビュー読んでたら、きっと落ち込みそう。初心者に戻ったということで、許してくださいまし(あ!かわいい少年兵のことは…恥ずかしいから、やめよう)皆様お目汚しのレビューでごめんなさい。

ハウプマン
10点
 ハリウッド戦争映画では常に悪役の宿命にあったドイツ軍を、血の通った生見の人間集団として真っ正面から取り組んだ力作。ソヴィエト軍の厳しい圧力を受けながらも敢闘するシュタイナー小隊を中心に、それぞれのドイツ軍人の生死を描いている。
 ドラマは原題「Cross Of Iron」が示す通り、鉄十字章の獲得のみに執着するストランスキー大尉と、権力にこびず、組織に対する順応性は欠けるが、戦士として秀でた能力をもつシュタイナー軍曹の対比を大きな骨格とし、同じ戦場に身を置きながら、全く異なる二人の行動にスポットをあてる。
 ストランスキー大尉は部下を統率し、与えられた任務を円滑に遂行すべき責任者である「将校」だが、彼にはリーダーとしての資質はない。名誉の象徴である鉄十字章授与が唯一彼の目的であり、戦死者の戦功を自らのものとして恥じず、同性愛の部下を悪戯に追求して、その困惑ぶりを見て楽しむような狭量な人物である。対するシュタイナーは昇進や勲章には関心がなく、部下の命を無駄に消耗させないことに使命感を抱いている。クールで寡黙な中に秘めた人間愛は、サンダース軍曹(コンバット)に通じるものがある。

 この映画のテーマは、「指揮官(リーダー)とは何か」であると私は思う。指揮官が誤った目標に心奪われる時、部下には過酷な運命が待っている。およそ組織に生きる者にとって、無能な指揮官とは部下の命を縮めるだけの存在である。これは軍でも、会社でも同じであろう。恥ずべき行為を平然と行いながら立身出世を夢見るストランスキー大尉は、本来将校として最も活用すべき「有能な部下」を殺すことすら厭わない。シュタイナー達が大尉の命令を受けた味方機銃陣地から激しい銃火を浴び、一人また一人と死んでいく様は涙なくしては見ることができない。二人の根ざすものの違いが、味方による殺戮という最悪の形で表現されたのは実に見事だと思う。たかが、一個の鉄十字章のために多くの味方兵士を殺したストランスキー大尉は万死に値する。ラストシーン、シュタイナーの殺意の前に必死に抵抗する大尉が、シュタイナーに上官であることを思い出させようとして発した「お前の小隊はどこへ行ったのだ!」という詰問。この言葉に反応したシュタイナーはすでに殺意を喪失します。「俺の小隊は、お前一人だ」シュタイナーが大尉を連れて、最後の戦いに向かう時、卑怯者の大尉が「守るべき部下」となっていることは間違いない。最後の笑いは、兵士としての能力に欠ける大尉が、兵士としての名誉を追求した滑稽さを笑っていると同時に、権威主義がはびこり、形だけで中身のなくなった軍組織をも笑っているのだろう。ペキンパー監督、J・コバーンよ、ありがとう! この映画を忘れることはない。

08/15
9.5点
これはスタイナーの戦争だ。彼は彼の戦いをする。あんなに彼を信じ頼もしく思う
ブラント大佐でさえ彼には埒外の存在であることが後で明らかになっていく。

いつの時代、どこの戦場にもいそうな古参の下士官スタイナー。ここがクリミアの戦場であることが特定されているだけである。彼の家はどこなのか、家族はいるのか、全く明らかにならない。年齢すら定かでない。深い皺は時間ではなく戦場が刻んだものであろう。負傷して入院しても帰ろうと思う方向は東の自分の部隊でしかない。彼の戦場での行動はまるで良き市民のようだ。それはそこが彼の家であるから。
彼が築き上げてきた家族のような小隊が闖入者によって壊れていく。それが彼と全く異質の存在ストランスキーである。

思い入れたっぷりの書き出しになってしまいましたが、ドイツの映画人が描きたかったドイツの戦争の実相をアメリカの力で具現した作品と考えています。ペキンパーが監督するようになった経緯は何故かは知りませんが、成功であったと思います。塹壕戦で押し寄せるソ連兵、壕を蹂躪しようとするT34などの凄まじい戦場の描写、病院での挿話、各人の性格の書き分け等いずれも鮮やかで、さまざまなエピソードに無理がありません。脚本、監督の力量のなせる技ではないでしょうか。コバーンはドイツ人には見えないのですが、その皺と演技に免じていいことにします。長い苦難を経て友軍の陣地へ帰ってくる男たちを無惨に射ち殺すシーン、胸に迫りました。それと最後のスタイナーの哄笑。すばらしいラストです。

反面、ストランスキーの描き方がやや表面的であることと、エンドタイトルの絵とブレヒトの警句はドイツ映画としての免罪符と感じられて好きになれません。ここが減点でした。

ともあれ戦争映画の最高傑作の一つであることは間違いありません。

アントン・ハックル
9点
 本来なら12点くらい上げても良い作品。ペキンパーの作品の中ではベスト・ワンとも言えるほど好きな映画である。
 ただ、何とも悔しいのがこの作品ペキンパー自身で編集していないというところ。言われてみればショットのつながりにおかしなところはあるし、今いち華麗なペキンパーの美学とも言えるスローモーションのカット割に荒さが見えないこともない。
 プロデューサーのドイツ人はかなり製作課程でペキンパーともめたらしく、もっともペキンパーはそういうことで有名だが、ペキンパー本人に言わせると「ギャラすら払わず、人からフィルムを巻き上げた。」と後日憤慨して述懐している。
 確かにくせ者のプロデューサーであるらしく、この後にも続編と呼ぶにはとんでもない出来の作品を、しかもシュタイナーを死にかけ(失礼)リチャード・バートンに演らせ、監督も落日(また失礼)アンドリュー・V・マクラグレンに撮らせた怪作まで作ってしまっているが、これを続編と考えるのはよそう。
 だが何と言ってもこれは歴代戦争映画の中では名作中の名作なのだ。公開時に岐阜という田舎の映画館でこれを観たとき、見終わった後もしばらく席を立てなかった。あまりのショックに「なんじゃあ、こらあ。」とジーパン刑事状態だったのだ。音楽といい、色といい、これに対抗できる作品は「ワイルド・バンチ」しかないだろう。いや、くどいようだが編集さえペキンパーが手がけていたら、ウィリアム・ホールデンなんかコバーンの前にすっ飛んでしまっていたかも知れないのだ。
 この作品が米国でほとんど無視されたに等しい結果であったことは悲しいし残念である。アメ公というのは自国製の作品以外は冷酷なほど無視する傾向が強い。特にアメリカ兵が出てこない作品はなおさらである。
 だがそんなこたあどうでもよいのだ。大作「コンボイ」が大コケし、まさに「ちょんぼい」となってしまったことで米国でホサレていたペキンパーが、わざわざユーゴスラビアまで出かけて渾身の力を込めて撮った作品なのだ。
 MP-40を捨ててPPSh41を持つシュタイナーもイイッ。ポテ気味のウエストを隠しながらも後ろ姿の瞬間ヌードだけで妖艶さを見せてくれたドイツ人女優ゼンタ・バーガーも文句無くイイッ。
 最後に思うが、「SPR」はある意味ではこの作品のオマージュでは。どう考えてもスピルバーグはこれに映像的な影響を受けているとしか思えないだのが。

Hawkeye
9点
まずは、最高の戦争映画だと思います。 Saving Private Ryanが登場するまでは、戦闘リアリズム表現に関して比類無く、未だにSPRでさえ超えられない描写が随所に登場します。 これがこの映画の最も優れた点であり、世代を超えて戦争映画ファンの心を捉えて放さないこ点であることは論を待ちません。

個人的に気に入っている点、目から鱗の点を他に挙げれば;
1) オープニングの記録フィルムの構成によるタイトルから本編への入り方が秀逸!
2) 登場兵士の小火器の扱い方が本物っぽくてかっこいい。
3) 塹壕戦の迫力は飛び抜けて秀逸である。
4) 柄付手榴弾の点火方法を、この映画で初めて知った。
5) MG42の殺傷力を存分に表現した初めての映画である。
6) この映画でPPShを見直した。
7) この映画で、♪蝶々、蝶々・・がドイツの歌だと初めて知った。
8) ゼンタ・バーガーはちと太めになっちまったけど、この時はまだ行ける。

逆に、最高の戦争映画ながら難点を挙げると;
1) やはり、いかにドイツ語っぽくても、英語であることは如何ともし難い。
2) 本編の終わり方も最高だが、続くエンド・ロールの背景写真に、アジア系と思われる子供の写真が登場するのが白ける。 安直な戦争批判・平和賛美を暗示して欲しくなかった。

J・コバーン演ずるスタイナー軍曹の生き様は何だったのか? それがこの作品のテーマですが、ストランスキー大尉が司令部に着任した際に、耳にした軍曹の名前を誰何した際に、参謀のキーゼル大尉は「今の我々の希望だ」と答えます。これは決して軍曹の戦闘指揮能力が東部戦線で敗色濃厚のドイツ軍を救うとの希望ではないんですね。

戦闘に於いては冷徹な指揮官であり、任務を疎かにし、女ロシア兵に急所を噛み切られた部下を、女ロシア兵の報復に任せたり、帰還した部下を射殺した味方将校をPPShの弾倉が空になるまで撃ち尽くすなど、拍手喝采のハードボイルドぶりなのであるが、面子で鉄十字章を欲しがる上官に対峙する時、病院に見舞いに来た不遜な将軍を無視するとき、助けたロシア少年が撃たれたとき、重症のロシア女性兵士の傷を見たとき、スタイナー軍曹が見せた怒りに燃えた悲しげな目が全てを物語っています。

彼に大切なのは戦争で生き抜くことと同時に、兵士として、人間として、男としての「矜持」を守ることなのです。 

ラストにスタイナー軍曹はストランスキー大尉を殺しもせず、「軍曹!お前の小隊の残りはどうした!」と言う大尉に、一瞬の死んだ部下達のフラッシュ・バックの後に、にやりと笑って「俺の小隊の残りはお前だ!」と言います。 ここでも軍曹は人間の矜持を守り、大尉を自分の部下として戦わせる事により償いをさせる事を選択します。 

1943年のクリミア半島で敗走するドイツ軍を舞台に、こうしたテーマを米国人監督により作られた映画は、ドイツ、米国、両方の国では公開当時、どんな評価であったのかは詳しく知らないが、米国ではSPR公開後に対比して語られるのを散見した。 私見だが、SPRはトータルでこの映画を超えることが出来なかったと思う。

Marmel
9点
ドイツ兵が主人公の映画は数少ない中でも、秀逸な戦争映画と考えております。
一番最初の童謡からテーマ音楽に変わっていくときにつかわれている実写のヒトラーの高笑いと捕虜となったドイツ兵の無表情、怯えるパウルス元帥の視点の定まらない表情は、なんとなく、映画上のストランスキー大尉、キーゼル大尉やシュタイナー軍曹等の将兵、ブラント大佐に重ねあうような点があるように思えました。
 9点という評価は、最後のラストシーンが曖昧であること。主人公達がドイツ語話していないこと(無理もないですが)もう少し、キーゼル大尉を出してもらいたかったこと(個人的な問題ですが)です。

戦闘シーン
 砲撃で死んでいく兵士、味方の機関銃に倒れていく兵士、混乱の中の白兵戦は血なまぐささを感じはするものの、表面的な暴力を匂わせない(シュタイナーの部下か味方の機関銃に殺されるシーンは内面的な残酷さを感じる)点がよくできているように思えます。
 むしろ暴力的に感じるのは、シュタイナー軍曹入院時の皿やビンを割るシーンにあるように思えます。

将兵たちの確執
 将校同士の確執、将校と兵士達の確執、兵士間の確執、これがないとこの映画は成り立たないでしょう。
「どこにでもいる英雄気取りの間抜け」ストランスキー大尉は、それこそ「どこにでもいる勘違いした嫌われ者」で、キーゼル大尉もどこにでもいる疲れ果てた人間でしょう。そして、さまざまな確執が生まれるのは、いたし方のないことで、それを原題「Cross of Iron」で象徴させているようです。つまらない欲のために、いがみあいに焦点を当てることで、戦争という非日常的なことを、なんとなく日常で体験するようなことと照らし合わせることができます。年を経るごとに、そのあたりに共感を覚えるのは、私だけではないと思います。 

音楽と歌
 ソ連の少年兵のハーモニカから始まり、マイヤー中尉の誕生日の歌、将軍を迎える時の勇ましい軍歌、場面場面での歌の使い方は、ほかの戦争映画より秀でた演出のように思えます。

出演者
 シュタイナー軍曹はドイツ軍人というより世界標準のヒーローという印象を受けますが、とにかく渋くて格好いい存在です。
 ストランスキー大尉を演じるマクシミリアン・シェルは「遠すぎた橋」のビットリヒ中将の印象が強くて、あまりしっくりきませんが、ストランスキーの役をどうにか上手くこなしたと思えます。
 ジェームス・メイスンのブラント大佐は、かつてロンメル元帥の役をこなしただけに、背後に敗北を悟りながらも、任務を遂行する独特の美学を感じさせます。
 キーゼル大尉と地図を見ながら「ここを電撃戦で突破すれば……」と言う表情には「環境さえ良ければ成し遂げることができるのに」というプロフェッショナル特有の何かを感じさせてくれます。
 最後にキーゼル大尉の、タバコの吸いすぎと無愛想な表情は、デヴィット・ワーナーが適役だったかも知れません。ちょっとニヒルを決め込んでいますが、大佐との別れのシーンでサイドカーに乗る姿と、敬礼の後にタバコを捨てる姿の一連のカット割は非常に印象的でした(乗った後のシーンは、本人が足が長いせいか窮屈そうでしたが)

HiroakiMaekawa
8点
良い映画です。なんと言ってもコバーン?が渋い軍曹?ですね。武器もMP40でなく”マンドリン”のドラムマガジンを使ってるとこなんか素敵です。塹壕の戦闘シーンなんかもSPR以前の映画の中では最高の部類に入るんじゃないですか?ただ、看護婦とのシーンなんかは不要です。その点SPRには及びませんね。得点は8点です。

赤男爵
8点
戦争映画に違いないのだが、色々な点において異色の作品。ペキンパー監督がそれまでの西部劇やアクション物から離れ、独ソ戦をユーゴスラビアで撮影したというどこにも脈絡がない。強いて共通点を探せば、戦争は(なぜかシュタイナーがクラウゼヴィッツを引用する)究極のバイオレンスだからということか。映像的にはそうかもしれないが、単にバイオレンス映画の延長ではないだろう。むしろ、アメリカでは描きにくかったことを時代と舞台を変えて映像化を実現したかったということではないだろうか。臆病なくせに名誉欲の皮が突っ張った将校、その上にいてどちらかといえば無関心で前向きでない司令官、作戦を立案すべき参謀は倦怠感に憑り付かれている。頼りになるのは一握りの経験豊富な下士官とその仲間だけ。確かにベトナム戦争敗北後(野戦病院で将官連中が廃兵を見舞うシーンは明らかにベトナム戦争を意識している。)の自信を亡くした米国に蔓延していた病巣構造をドイツ軍の中に投影したのかもしれない。だとすると、最後の場面は「アメリカよ、内なる怨嗟は忘れ、迫り来る共通の敵に当れ!」というメッセージとなる。だとするとなぜキーゼル参謀大尉が次代を担う希望なのかよく解からないというのが正直なところ。
そうした病んだ時代の悩みがないMシェルはじめドイツの実力派の俳優たちはまるで自国の映画でもあるかのように個性豊かに溌剌としたいい演技をこなしている。それにひきかえ少数派のアメリカ側のJコバーン、JメイスンそれにDウォーナーの演技はどことなく投遣り、コバーンでさえ中尉の誕生祝いの場面などで溶け込みきれておらず、むしろ浮かび上がっていたような感じさえする。
戦闘シーンはもはやコメントするまでもないほど賞賛され語り尽くされているが敢えて好みのシーンを幾つかあげると;
T34が音も無くズーンと路上に停止している場面、迫り来る恐怖の予感が背筋を走
る。
同じくT34が工場内部まで突進して来る場面、圧倒的破壊力の前に非力な歩兵が逃げ惑う。
帰還する味方に向かって火を噴く三脚架上のMG42、無表情の銃手と止めようとする別の兵士。倒れた戦友を背負って一歩でも前に進まなければならない。
戦争映画史の1ページを刻んだ作品であるものの難解な面は否定できないということで8点。

zono
7点
イロイロな意味で男の映画ですね。(笑)
ドイツ軍側が主役の戦争映画は少ないので楽しみにしていたのですが、やはり僕には兵士たちがアメリカ人にしか見えませんでした。しかし、作品そのものはOPの子供の歌声から劇中のスローの使い方とか監督らしさが出ていて格好イイですよね。
ちょっと1回見ただけでは理解しにくい場面転換などもありましたが・・・。

ソ連の女性兵士が涙を流しながら新兵ディッツをナイフで刺すシーンと×××を噛み切るシーンが印象的なのは僕だけでしょうか?なんとなく彼ら(彼女ら)の状況や心情などが対照的に描かれてるような気がしたのですが・・・。

評価としてはラストがスッキリしないので勇気を出して(笑)7点です。