[解説]
一九五九年夏のベニス国際映画祭でグラン・プリ(サン・マルコ金獅子賞)を獲得したイタリア映画 「ロベレ将軍」は、数年来の沈黙を遂に破ったロベルト・ロッセリーニ監督(「無防備都市」「戦火のかなた」「ドイツ零年」「ストロンポリ」「ヨーロッパ一九五一年」)と、これまた伊映画界の代表的監督であり名優であるビットリオ・デ・シーカの二巨星が、はじめて協力して作り上げた傑作である。
「ロベレ将軍」は、第二次大戦末期北伊ミラノ市のサン・ビットーレ刑務所に投獄された当時の貴重な体験をもとに、有名な新聞記者インドロ・モンタネリが書いた同名のベストセラー小説より、伊映画界屈指の脚本家セルジョ・アミデイ(「無防備都市」「戦火のかなた」「靴みがき」)、現代イタリア文壇の鬼才ディエーゴ・ファッブリ、それに原作者モンタネリ自身が加わってシナリオを書いたものである。
撮影は一九五九年七月四日に開始され、八月一八日に終了、昼夜兼行で編集を急ぎ、ベニス映画祭上映期日の前日、八月二九日に完成するというロッセリーニ監督はじめてのスピード製作であった。また撮影も従来の同監督作品と異なり、殆んどローマの大撮影所チネチッタで行われたことも特色がある。
ベニス映画祭でグラン・プリを獲得してから一ヵ月後の一〇月七日、この映画がローマ市の中心部にあるクァットロ・フォンターネ劇場で独占封切りされた時、劇場へは学生を中心とするファシストたちが上映を阻止せんと大挙おしよせ、催涙弾を投げて上映を不可能にするという事件が起きた。そのため警官隊が出動して、劇場付近は時ならぬ大混乱におちいったのである。一九四三年一〇月から四五年四月までの第二次大戦末期、ナチズムおよびファシズムに対し、直接武器をとって闘争した勇敢なパルチザン戦士たちの抵抗運動を描き激しい憤りをこめて無暴な全体主義を糾弾した「ロべレ将軍」は、今やイタリア全土に異常な反響を呼びながら上映中である。
主演者は「靴みがき」「自転車泥棒」「ミラノの奇蹟」「終着駅」「屋根」なとの名監督で、俳優としても一流中の一流であるビットリオ・デ・シーカが、はじめてドラマチックな熱演を見せるのが非常に注目される。
共演者は、ナチ・ドイツ軍の地区司令官に独映画界の性格俳優で「鉄条網」「バベット戦争へ行く」「脱獄十二時間」のハンネス・メッセマー、「エロデ大王」「両面の鏡」の売っ子肉体女優サンドラ・ミ−ロ、わが国初登場の人気女優ジョバンナ・ラリ、「掟」で警察署長を演じたビットリオ・カプリオーリ、それに「靴みがき」「青春群像」「可愛い悪魔」の若手人気男優フランコ・インテルレンギが特別出演している。
撮影は「三月生れ」のカルロ・カルリーニ、音楽はロッセリーニ監督の弟で「無防備都市」「戦火のかなた」の名作曲者レンツォ・ロッセリーニ、それにロッセリーニ監督の長男レンツォ・ロッセリーニ二世が助監督として製作に参加しているのも話題の一つである。
「ロベレ将軍」は、引続き一一月二五日、サンフランシスコ国際映画祭で作品、監督、主演男優、助演男優(ハンネス・メッセマー)、脚本の五部門のゴールデン・ゲイト賞(グラン・プリに相当)を独占した。
最近この映画の主人公ジョバンニ・ベルトーニの未亡人と娘があらわれ、原作者モンタネリと監督ロッセリーニを起訴し、ジョバンニを全く違って描きだしたために自分たちの生活が乱されたという名誉毀損の理由で、書物と映画の没収を要求しているのも現在大きな話題を呼んでいる。 |