[解説]
往年幾多の名作を放つたオーストリア映画が、戦争や分割占領の打撃から立直り、健在を示した戦後の代表的傑作。カンヌ国際映画祭で国際大賞、最優秀女優演技賞ほか、ベルリン国際映画祭で一等賞、最優秀監督賞、エジンバラ映画祭におけるセルズニック・ゴールデン・ローレル賞など世界各国で受賞している。
戦争中、ドイツの女医が敵ユーゴスラヴィアのゲリラ部隊に捕えられ、負債兵の手当を強要される。彼女は幾度となく脱走を試みるが見破られ、パルティザンと行動を共にするうちに医者としての自戒が日ざめ、祖国愛に生くべきか、人間愛に殉ずるべきか、運命のかけ橋の上に立ち、敵味方の砲火の中に悲壮な最後を遂げる実話に基く物語である。全篇ユーゴスラヴィアの絵画的な風光を背景に、戦場という修羅の巷における緊迫した場面が連続し、またそこにはユーモアが、ボスニアの古い印象的な民謡が流れる。ヘルムート・コイトナー監督は、これらを雄大な構想のもとに巧みにまとめ上げ、この映画詩を完成したのである。
出演者は「最後の橋」「居酒屋」でカンヌ・ヴェニス両国際映画祭最優秀女優賞に輝く天才女優マリア・シェル、(他に「かくて我が恋は終りぬ」「ナポレオン」)をはじめスイス系のオーストリアの映画・舞台スター、ベルンハルト・ヴィッキ、「誰が祖国を売つたか」のパルバラ・リニアインク(西ドイツの大スター)、オーストリア映画で活躍するカール・メーナー(男の争い)および助監督のホルスト・ヘヒラー(マリア・シェルのフィアンセ)、「罪ある女」のロベルト・マインなどのほか、ユーゴ、西ドイツ、オーストリア、スイスのヴェテランが助演している。
脚本はコイトナーと作家ノルパート・クンツェの共同執筆、撮影監督はユーゴのエレイオ・カルニエル、音楽はカール・デ・グルーフか担当し、ユーゴの監督グスタフ・ガヴリンが演出に参加した。オーストリアのコスモポール・フィルムと、「他国者は殺せ」「戦争と平和」の製作に協力したユーゴのウフス社との共同製作により完成した近代映画芸術の金字塔。 |