[解説]
ワシントン州シアトルに近いポート・レーニュ海軍航空士官養成学校(AOCS)。そこに一人の若者が志願してきた。
母親を自殺に追いこんだ自堕落な元水兵の父への反発。その任地だったフィリピンでの悲惨な少年時代──屈折した青春を生きてきたザック・メイオにとって、大空を飛ぶジェット・パイロットになることは、幼い時の夢の実現以上に、ヤクザな青春への決別を意味していた。
そんな陰りある若者の前に、忘れていた人生の熱い感動を呼び覚ます二人の人物が現われる。一人は鬼と恐れられるタフな黒人訓練教官フォーリー。もう一人は、基地近くの製紙工場につとめ、ザックとの愛に現状からの脱出を賭ける娘ポーラ。
過酷を極める13週問の猛訓練が始まった。軍曹のしごきに耐えられず脱落していくもの。女との愛に溺れ、自らの命を絶つもの──最初、一匹狼的生き方を頑に固持していたザックだったが、仲間達との様々な関わりの中で次第に心の成長を遂げてゆく。その最大のものが、男対男の対決から最後には理解し合えるフォーリーとの熱い友情であり、曲折を経ながら感動の成就を迎えるポーラとの清々しい愛だった──。
原題の『士官と紳士』とは、士官は先ず紳士(人間)であるぺきもの、の意。アメリカ国内無数にある士官養成所の一つをバックに、頑な心の若者が、過酷な訓練に耐え抜いてラスト本物の人間愛に目覚めるまでを正改法で描いた感動のドラマ。最近では少ない緻密な人間描写による手応え確かなラブストーリーとして、いま全米で早くも興収七千万ドル(百八十二億円)突破の大ヒットを飛ばしている話題作だ。
主演は、主人公ザックに「ヤンクス」「アメリカン・ジゴロ」など、影のあるセクシーな若者を演じては天下一品のリチャード・ギア、その恋人ボーラに「アーバン・カウボーイ」の注目株デブラ・ウィンガー、鬼軍曹フォーリーに「ザ・ディープ」TV「ルーツ」の黒人演技派ルイス・ゴセット・ジュニア、ザックの親友に「ローズ」「プルベイカー」のデビッド・キース、その恋人に新人リサ・ブロントという顔ぶれ。これに「ピンク・パンサー4」のベテラン、ロバート・ロッギア、TV界の新人リサ・アイルバッヒャー、「サンフランシスコ物語」のハロルド・シルベスターらが好助演。
自ら同じような体験を持つ「青い珊瑚礁」のダグラス・デイ・スチュアートのオリジナル脚本をもとに、TVのロック・コンサートもので鳴らした新鋭テイラー・ハックフォードが、『アイドルメーカー』(未)に続いて劇場用二本目の演出。演技者から最上のものを引き出す名手として、ここでも非凡な才能を見せている。
製作は「狼たちの午後」のマーティン・エルファンド。ワシントン州ポート・タウンゼントにロケした撮影は「ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー」のドナルド・ソリン。そして、編集を「ゴッドファーザー」「ディア・ハンター」(オスカー受賞)の名手ピーター・ジナー。音楽を「カッコーの巣の上で」「クルージング」のジャック・ニッチェがそれぞれ担当。主題歌“Up Where We Belong”をジョー・コッカーとジェニファー・ウォーンズがデュエットし、ムードを盛り上げている。 |