[解説]
今から十年ばかり前を中心に、北アフリカのアルジェリアで激しい民族独立の戦争がくりひろげられた。日本人にとっては、はるかかなたの火事であったかもしれなかったが、いまここに徹底したドキュメンタリー精神で、戦争の全貌を伝える映画がもたらされた。こうした分野では記録映画のすさまじい迫力に及ぶものはないと考えられてきたが、数千人におよぶ目撃者の証言、記録、写真から、あらゆる努力を重ねて、ニュース映画のただ一コマも使わず、実写もはるかにおよばぬくらいリアルに再現した。1966年度ベネチア(ベニス)映画祭でも、数ある名画をおしのけて、栄えあるグラン・プリを獲得した。
監督のシロ・ポンテコルボは前作「ゼロ地帯」(1960年、ベネチア、マル・デル・プラタ両映画祭参加、1961年アカデミー外国語映画賞ノミネート)いらい五年間この映画にかかりきりになった。脚本家のフランコ・ソリナスと現実におこったさまざまなエピソードをまとめて、まさに“事実は小説よりも劇的だ”といわれる見本みたいにドラマチックなシナリオを完成した。これは独立後のアルジェリアで作られた最初の長篇劇映画であり、イタリアとアルジェリア両国映画人の五年にわたる協力の成果であった。映画の中でジャファルを演じているヤセフ・サーディは現実にカスバで地下組織を指導した斗士の一人で、同志をフランス落下傘部隊に殺害された。現在はカスバ・フィルムの社長として全財産をなげうちこの映画のプロデューサーをつとめている。『私は機関銃をカメラにとりかえたのです。当時を再現し、あの感動を再びよびさますことによって、ある国家や国民を審判するのではなく戦争や暴力のおそろしさを伝える客観的な映画を作りたいと念願していたのです』と語っている。
戦車、大砲、トラック、ヘリコプター、小火器などすべての武器はアルジェリア軍当局から提供をうけ、すべてを忠実に再現するため衣裳などは全部新らしく作られた。またアルジェリア、フランス、イタリアの軍事専門家のアドバイスもうけた。建物も完全なものが新築され、数キロメートルの電線と数トンの爆薬を使って爆破され、石の山になった。
138人におよぶ主要人物も、ほんの2、3人をのぞいてまったくの素人。主役の英雄アリ・ラ・ポアントを演じるブラヒム・ハジャックは、アルジェ郊外に住む漁民で、アリとそっくりの容貌の持主であり、しかもよく似た経験の持主であった。撮影の舞台はほとんどがジャン・ギャバンの「望郷」で名高いカスバでおこなわれ、八万に及ぶ全住民がエキストラとして感動的なクライマックス・シーンに出演した。
音楽はイタリア映画界の第一人者で、「夕陽のガンマン」のエンニオ・モリコーネが担当している。
なお、ベニス映画祭ではフランス大使館が反仏映画として上映中止を申し入れたが事務局がうけつけず、上映日には短篇がおわると代表団が退席、受賞式でもグラン・プリときまった瞬間、全員席をたつという騒ぎもあった。 |