[プロダクション・ノート]
★製作者は語る
史実としてナバホのコード・トーカーズの存在を知ったアリソン・ローゼンワークは言う、
「兄のセスから話を聞いたときはすごく心動かされたけど、素晴らしいドキュメンタリーになっても、劇映画には向かないと思ったわ」
8年後この企画を動かす時点でキーポイントを得た。
「暗号通信兵には護衛兵がついているんだけれど、彼らには日本軍から護衛兵を守ることも重要だけど、暗号の機密保持の任務も受けていたのよ」企画は劇映画に傾いた。
★脚本家は語る
抜擢された脚本家ジョン・ライスとジョー・バッターはこう振り返る。
「“ある海兵隊員が困難で良心が試されるような命令を受ける事態に陥り、戦争という異常な状況で決断をせねばならない”というアリソンたちのシンプルな説明は、恐ろしいくらいに引き込まれた」とライスは言う。
「とくに衝撃なのは、護衛兵の任務は暗号機密を守ることであって人命保護が第一義じゃないんだ。捕虜にとられる前に抹殺せねばならない命令を受けていたというんだ」とバッターは続けた。
エモーション満点の説明を受け、脚本は綿密な調査と共に動き出した。
「タイトルはナバホの言葉から得たんだ。文化・宗教から感じる霊性を得ようとしたんだ」
ちなみに、この暗号保護の国辱的な事実はいまだに海兵隊で認めていない…。
★プロデューサーは語る
テレンス・チャンは企画成立の状況を語る。
「ジョーとジョンは素晴らしいストーリーテラーだったね。ジョン・ウーは立ち上がって拍手し“まさに私のタイプの映画”と脚本完成前から絶賛していた」
撮影は20週間に及んだ。ハワイと南カルフォルニアのオールロケだ。テレンス・チャンは言う、「サイパンの緒戦は、初稿では大規模なものではなかった。最終稿は監督のもので大規模戦に改築されていた。導入部で火薬は280個、エキストラを700人使ったよ。ジョンと私とで手掛けた中でも最大クラスの作品なのは事実だね」
★監督は語る
先日来日したウー監督は、この作品についてこう語った。
「私の作品の主なテーマは『友情』ですが、私自身も『友情』は本当に素晴らしいものだと思います。特に違った環境で育った人々が友人になり、一緒に仕事をするということは、素晴らしいことだと思います。だからこそこの映画を作った、と言っても過言ではありません。
もちろんこの映画は歴史の事実を描いたものですが、私は『友情』に焦点を当てたいと思いました。中国、日本の文化は昔から『友情』『誇り』『忠誠心』を重んじてきたと思うし、それをアメリカの映画の中でも描いていきたいと考えていました」
「この作品を撮ろうと思ったのは、戦争映画の中には、素晴らしい人間ドラマがあると思ったからです。『ウインドトーカーズ』は、皆さんもご存知の通り、第二次世界大戦のナバホ出身の通信兵たちの物語です。またその中に素晴らしい友情物語も含まれています。しかしながらこれは実話なので、これまでとは違った手法で撮影する必要がありました。これまで私が作ったアクションシーンは、とても派手で、ロマンティックで、また舞踊のような雰囲気があったのですが、今回のアクションシーンは今までとは似ても似つかないものになりました。それは、このアクションシーンを通して『戦争は地獄だ』ということを描きたかったからです。ドキュメントタッチの映像にして、観客が戦場に立って惨劇を目撃し、兵士たちが感じているような『恐怖心』や『危険』を感じられるような撮り方にしました。また、戦争はどちらが悪いということはないので、物語を感情的にしたいとも思いました。アクションシーンも大事ですが、人間ドラマ的な側面も重視しました」
★撮影監督は語る
激しいアクションを独特の映像で演出するウー美学の構築を、ジェフリー・キンボールは経験済みだ。
「ジョンはアクションも、カメラも踊るように動いているのが好きなんだ。彼はこの作品にリアルさを求めた。観客が戦場にいるのかと錯覚するようにね。スーパー35ミリで撮影したものは、劇場で画面がさらにワイドに感じるんだ」
使用カメラは戦闘シーンで14台にものぼった。俯瞰のヘリ・ショット、塹壕の中の仰角カメラ、前線のステディカムなど。撮影隊はカモフラージュのため、兵士の服を着、軍トラックや戦車からアングルをねらった。
「とにカモフラージュには気を遣ったね。海兵隊のカメラマンが第二次大戦中に使っていたカメラを使ってまで偽装した」
★俳優は語る
俳優陣は、それまでのハリウッド・アクションにはない演出法に舌を巻いた口々に驚きを漏らす。
「とてつもない監督だよ。あるカットでは、ステディカムが僕らを塹壕まで追ってくる。兵士から兵士へと移動する長いカットでは、監督が全ての動きを振り付けた。映画というより一幕物の芝居のようだった」と、マーク・ラファロは語る。
「みんな(撮影地)に来て驚愕してたよ。まさにそこは第二次世界大戦が再現された感じだった。圧倒的なスケールのセットで、演じることが危険で恐ろしく感じられた」と、セット撮影の印象を語るクリスチャン・スレーター。
「最初の撮影2日間で、ちょっと戦争神経症にかかってしまった」と、アダム・ビーチは驚きを隠せなかった。
「この映画の撮影のおかげで、戦争観がガラッと変わったね。戦争とあれ以上“お近づき”になるのはもうゴメンです」とノア・エメリッヒは告白した。
「監督は高度なレベルのアーティストだと思います。自分のビジョンを持ち、それを独創的に表現できる人です。どの作品を見ても“ジョン・ウー”印が見えます。また、人間的にも優しく、相手が誰であれ、敬意を持って付き合うことができる人です。また俳優経験があるので、俳優たちとのコミュニケーションも上手く、彼らに自信を与え、また彼らがクリエイティブになれるように指示できる人です。そこが彼の大好きな部分です。そういう監督のもとで演技をしていると、ベストを尽くしたいと自然に思えてきます。これだけ大きなスケールの作品を独創的に描ける、というのは非常に稀だと思います。普通、大きな作品を作るときは独創的になることを恐れてしまうものですが、監督は大きな作品にも自分のスタイルを貫いています」と、来日の際にウー監督への思いを語ったのはニコラス・ケイジ。彼は本編中で意外なほど流暢な日本語を話し驚かせる。
「実は小学4年生の時、日本語が勉強したくて、数年間カリフォルニアの日本の小学校に通っていたのです。今は日本語はほとんど忘れてしまったのですが……。今回ジョン・エンダースを演じる際、日本語を話すのは当然じゃないかと思い、日本語の先生に撮影に立ち会ってセリフを考えてもらいました。幼い頃の経験から、発音は自然にできました。こうして来日して日本人の言葉を聞いても、どこか懐かしい感じがしてくるのです。小学校の時は俳句も作りました(笑)」と、秘密を明かしてくれた。
★モブシーン証言
戦闘シーンは最大規模でキャスト人員700名以上が動員された。スタッフの人員を加えると1000人を越える。エキストラの大多数は除隊した元兵士、士官や現役軍人で休暇中の人々。サイパンの攻防戦をリアルに再現したオープン・セットのなかを進軍する彼らは異様な迫力に満ちていた。
「度肝抜かれたよ!ワン・カットでl000人以上の兵士が谷を埋め尽くし、その横を戦車が進み、何百と爆発が起こるなんて圧巻だった。素晴らしいキャストとスタッフが自分の書いたものを再現してくれるなんて脚本家冥利に尽きるね」と、オープン・セットでの撮影を見学したジョン・ライス。
★スーパーバイザーたちは語る
撮影に先立ち、メイン・キャストに加えてエキストラの中心になる62人が軍事訓練を受けた。国防省の協力の下、指導に当たったのは勤続25年のディーバー上級曹長だった。彼は、軍事テクニカルアドヴァイザーとしてモブシーンを指揮した。
「彼らは海兵の歴史から組織系統、武器の正式な使用法、当時の戦場の行動規範を学んだ」と指導内容を語っている。
当時の戦闘服を再現すべく、のべ2300着を研究の未完成させて、なおかつ実戦をくぐり抜けたような汚しや破綻をつけるのに腐心した衣装デザイン・スーパーバイザー、ニック・スカラノは語る。
「戦争末期はもう軍服も寄せ集めだったんだ。海兵の軍服もサイズも柄もバラバラのものだったので、作品に採用したんだ」
★監督は再び語る
「以前にも戦争映画を撮っていますが、本格的な戦争映画は今回が初めてだと思います。理由は先ほども申し上げましたが、反戦というメッセージを強く出したかったからです。どんな戦争でも地獄だと思うし、同時に友情だけが人間にとって大切だろうと思います。『ウインドトーカーズ』で描かれた戦闘は実際に起こったものです。真面目に捉え、戦争の恐ろしさを正確に伝えたいと思ったので、従来の私のスタイリッシュなアクションは抑える必要がありました。スローモーションや、銃を派手に振り回すような派手なアクションといった演出はあまりしないようにし、よりドキュメントに近い描き方をしました。
正直言って、この作品を撮っている間は、決して楽しいという感情を抱きませんでした。リアルな撮影現場を目の当たりにすると、世界のどこかでこれと同じようなことが起こっているんだと思うと、とても悲しい気持ちで一杯になったからです」 |