[解説]
米・ソの緊張と核の恐怖が全世界を包みこんでいる現在、まさにタイムリーに公開されるこの映画は、ぎりぎりまで追いつめられた二大国首脳の苦悩と、核兵器にたずさわる軍人の狂気を、秒刻みのスリルとサスペンスで描いた近未来SFの傑作である。
この映画の重要なポイントであり、原題にもなっている「フェイル・セーフ」とは、軍事・空軍用語で進行制限地点を意味する。
核爆弾投下の任務を負った爆撃機が「フェイル・セーフ」を越えてしまうと、誰もそれを引き戻すことができない。それがたとえ大統領でも。当然それまでには、いくつもの電子安全照合装置のチェックがある。だが、この装置が故障したら……。
早朝、アンカレッジの米空軍基地から水爆搭載の戦略爆撃機の編隊が巡回飛行に向けて飛びたった。
緊急事態発生!編隊が「フェイル・セーフ」を越えた。安全照合装置が故障したのだ。国防総省では将軍たちの状況討議が熱をおび、ホワイト・ハウスでは大統領がホットラインの受話器を握りしめた。そうするうちにも刻一刻、爆撃機はモスクワに接近する。
ユージン・バーディックとハーベイ・ウイラー共著のベストセラー小説を映画化したこの作品は、シドニー・ルメット監督7本目の作品である。彼は、ディスカッション・ドラマの名作「十二人の怒れる男」の形式をとりながら、世界を動かす男たちの姿を異様な迫力と熱気で描ききってみせる。加えて、緊迫感をぐんと盛り上げる演技陣が凄い顔ぶれ。
非情な決断を迫られる合衆国大統領に扮するのは「黄昏」の名優、ヘンリー・フォンダ。彼の輝かしい経歴の中でも最高の演技を披露してくれる。タカ派の政治学者を演じるのは、これまたオスカー俳優のウォルター・マッソー(「がんばれ!ベアーズ」)。二人の火花散る演技が見ものの一つ。また穏健派の将軍に、ダン・オハーリー、戦略空軍司令官にフランク・オバートン、大統領のロシア語通訳には「ダラス」のラリー・ハグマン、大統領の帰還命令を無視して軍紀を守るパイロットにエドワード・ピンズがそれぞれ扮し、好演、ダイナミックな画面作りに貢献している。
サスペンスに満ちた脚色はウォルター・バーンスタイン。製作マックス・E・ヤングスタイン。 |