[解説]
イギリス秘密情報部員007号ことジェームス・ボンドの登場以来、世界の映画は次々とスクリーンに凄腕スパイを登場させ、時ならぬスパイ・アクション・ブームをつくり上げてしまったが、その真打ちともいうべき存在としてここにあらわれたのがこの映画の主人公エディ・チャップマンである。
金庫破りの罪で入牢中をドイツ軍から目をつけられ、職業スパイの訓練を受けて彼らの仕事を手伝う一方、ひそかにフランスのレジスタンス運動にも一肌ぬぎ、なかば強制的に引っぱりこまれたイギリス軍のためにドイツ側の内部事情の逆スパイに活躍して、第二次大戦を連合軍の勝利へみちびくのに陰ながら大きな功績を残したチャップマンは実在の人物で、そのドラマチックな体験談は"事実は小説よりも奇なり"の言葉をそのまま実証してみせたような奇抜さだが、それを本にしたフランク・オーエンの原作を映画化するにあたって監督にテレンス・ヤングを選んだことが、この作品を第一級アクションに仕上げる最大の原因となった。テレンス・ヤングが、007シリーズ第一作「殺しの番号」、第二作「危機一発」、第四作「サンダーボール作戦」の監督で、世界的なスパイ・ブームの火つけ役だったことはすでにご存じだろう。
出演陣も異色揃いで、「サウンド・オブ・ミュージック」で大いに株価を上げたクリストファー・プラマー、「王様と私」のユル・ブリンナー、「サンダーボール作戦」でスターダムにのし上ったクローディーヌ・オージェをかこんで、「枢機卿」のロミー・シュナイダー、「007/ゴールドフィンガー」「パリは燃えているか」のケルト・フレーベ、「悪のシンフォニー」のトレバー・ハワード、「恋人たち」のジョン・マルク・ボリーなど米・独・英・仏の演技派たちが芸をきそっている。
製作はフレッド・フェルドカンプ、脚色はルネ・アルディ、撮影は「レディL」のアンリ・アルカン、音楽は「皆殺しのバラード」、「盗みのテクニック」のジョルジュ・ガルバランツ。
また、第二次大戦末期、敗色濃いナチス・ドイツが起死回生の新兵器として持ちだして、イギリスを恐怖のドン底にたたきこんだロケット弾V1号、V2号が、ドラマの中で大きな役割を果しているのも見おとせないところである。 |