![]() |
脱走山脈ケン・ブックスNo.85 1969年3月発行 |
[解説]第二次世界大戦中に、実際にドイツ軍の捕虜生活を送ったイギリス兵、トム・ライトのオリジナル・ストーリーを、プロデューサーで監督のマイケル・ウィナー「明日に賭ける」が共同で検討し、ディック・クレメントとイアン・ラ・フレネの2人が共同で脚色したスリル満点の冒険映画。 |
|
[プロダクション・ノート]この映画のヒロインは身長6フィート7インチ、体重5トン、セイロン生まれで、芳紀15才のインド象アイダである。1日にオレンジ、バナナ、乾し草、麦などを500ポンドも食べ、水を40ガロンも飲む女傑なので、ロケ隊は大忙しだったが、アイダがいない限り映画はできないので、監督以下全スタッフが全力投球でゴキゲンをとり結んだ。彼女の出演映画はこれが61本目だが、こんな大役は初めてなのでロケ日数は4週間。最初の1週間を稽古にあて、残りの3週間が撮影に費やされた。ところでこの間の苦労は食物だけではなかった。象は2000メートル以上の高所に48時間もいると、空気が稀薄なために不眠症になり、食欲もなくなってしまうので、2日おきに、低地へおろさなければならなかった。食事が3時間おきなのはまだしも、夜中に3時間しか眠らないのも困りものだった。暗闇を非常に怖がり、1頭だけでは決して眠らないので、やはり15才になるオス象を呼びよせ、一緒に寝かせたが、睡眠時間が3時間というのは、2頭が交代に起きて見張りをする習性があるためだった。ただこの映画のシーンにもある水浴びは、非常にスムーズにいった。水を浴びるのが大好きで、自分からどんどんはいって行ったからで、手がかかったといえば、撮影が終ったあとで、水から出すのに苦労したぐらいのものだった。 リアリズムの鬼を目ざすウィナー監督だけあって、1944年のドイツ、イタリー、オーストリアを再現するためにロケ撮影に際しては全神経を集中した。ミュンヘン市街の撮影だけでも、700本のテレビ・アンテナを取り除かせたのを始め、無数の看板、新しい型の車、電柱、その他戦後に作られた物は完全にカメラの前から姿を消させた。市街地以外で力を入れたのは壮絶な列車の脱線シーン。モンタフォン鉄道を3週間借り切り、利用者のためにバスを運行させ、丸太を付近一帯から買い集め、美術のジョン・ストールに戦車の精巧なモデルを作らせ、戦後の電柱や鉄塔を引き抜き、列車の運転士には時速30マイルになるまでとび降りさせず、列車が河に突っ込む時には70マイルのスピードに上らせた。また列車が脱線した直後の決定的瞬間をとらえるために、いろんな場所から、15台のカメラで撮影するという念の入れようだった。 |
|