[解説]
異常な環境におかれた異常な人間の生態を鋭く描き出して独得の存在を示したビリー・ワイルダーが製作監督した一九五三年度のヒット作品で、ウイリアム・ホールデンがアカデミー主演男優賞を獲得した名作である。
第二次世界大戦末期の捕虜収容所を舞台としているが、ユーモアとサスペンスとスリルに満ちた明るい作品である。ビリー・ワイルダーは最近では「アパートの鍵貸します」「あなただけ今晩は」などの一級娯楽作品を監督して荒々健在、巨匠として活躍している。
原作はエドマンド・トルチンスキとドナルド・ビーバン共作の舞台劇でブロードウェイで五百回以上の上演記録を持っている。脚色はワイルダーとエドウィン・ブラムがあたり、舞台劇臭を駆逐して映画手法を大胆に取り入れ迫力を加えている。カメラは「月着くして」 「底抜けびっくり仰天」 「勇者カイヤム」のアーネスト・ラズロ。音楽は一九五〇年にワイルダー監督と組んで製作した「サンセット大通り」で、また翌年の、「陽のあたる場所」と、つづけてアカデミー劇映画音楽賞を受賞し、「愛しのシバよ帰れ」「裏窓」などの名作を手がけているフランツ・ワックスマンが担当している。
主演のウイリアム・ホールデンは、ワイルダー監督と「サンセット大通り」以来二度目の顔合せで好調の波に乗り、ついにアカデミー主演賞を射とめたわけである、共演者のオットー・プレミンジャーは、「ポギーとベス」「或る殺人」 「栄光への脱出」 「枢機卿」等の監督として知られているが、この中では俳優として重要な役割を演じている。ロバート・ストラウスは舞台で、映画と同じ軍曹役を演じて好評を博し、この映画でも好演を認められ、以来、軍曹役者の如き異名を与えられた。「底抜け艦隊」 「底抜け落下傘部隊」などで大活躍。その他「黄金の腕」「攻撃」にも出演。また、この映画で重要な役割を演ずるのは、「明日並く」 「戦塵」のドン・テイラー。なお、ストラウスの他、舞台と同じ役で出演している俳優はハーヴィー・レムベック、ロバート・ショーリー、ロビンスン・ストーン、ウィリアム・ピアスンの四人である。原作者の一人エドマンド・トルチンスキが端役で出演しているのも異色作としてふさわしい。 |