[プロダクション・ノート]
☆ウォーケンの顔を変えた名人芸
スペクタクルなアクション効果もさることながら、この作品ではクリストファー・ウォーケンの端正な顔立ちを変えたメーキャップ・アーチスト、ディッキー・ミルズの仕事も見逃せない。サンガロ偵察行で秘密警察につかまったシャノン(ウォーケン)がまるで虫けらのように拷問を受け、その顔面がどす黒く変形するシークェンス。思わず痛みが伝わってくる迫力なのだ。
「単なる傷なら事は簡単なのだが、アービン監督は、サディスティックな拷問の跡を強調するようにということだった。そのため、白い特殊プラスチックを何枚も貼り合わせてほお骨の歪みを作り,その上に肌色のトーンをかぶせて、微妙な光と影の濃淡を作った」とミルズ。
さらに「これは私にとっても俳優にとっても最もやっかいな作業の一つだった。特にクリスは顔が引きつり、まばたきも満足にできなかったはずなのに泣き言一つ並べなかったのには感心した」と語っている。
☆映画史に残る大爆破シーン
映画史上空前ともいえる「戦争の犬たち」のラストの爆破シーンは,「地獄の黙示録」で職人芸を見せた特殊効果マン、ジョー・ロンバルディの腕の見せ所だった。
「“地獄──”の爆破シークェンスは映画史に残るものだったが、“戦争一一”もそれに優るとも劣らない破壊映画の傑作だ」と彼は言う。その腕の冴えはラストに劣らずプロローグのアクションでも発揮される。中米某国の内乱加担に失敗したシャノンら傭兵と民衆たちがたった一機の木製DC3型機で辛くも離脱するくだり。黒煙と真っ赤な砲撃を浴びて飛び立つまさにスペクタクルな構
図。仕掛ける爆薬、カメラの位置、時限装置…彼らの仕事は一つの呼吸の乱れも許されない一瞬の勝負だ。「我々が使うのはいつも実弾、実砲だ。だから仲間にはこう奮う。“うまくやろうとするなら決して急ぐな”」。
☆米英軍事筋注目の新兵器一一MM1
戦争アクションに登場する軍事兵器は、特殊なものを除き,すでに軍隊に採用されている場合が普通だが「戦争の犬たち」には、映画初登場の最新兵器がお目見えする。“MM1”という機関銃で、ハンディな追撃砲の能力をそなえたもの。140メートル離れた地点から普通のビルなら3、4発でこっぱみじんという破壊力だ。開発したホーク・エンジエアリング社のチャック・ホイットベック技師によると、普通のマシンガンの50倍からの能力があり、特殊なマガジン形態から照明弾、催涙弾の互換性も持つという。現在、米英両国国防省が正式兵器としての採用テストを行っている。
☆「俳優はつねにハングリーでなければ……」
シャノン役クリストファー・ウォーケンは役作りの気迫にかけては人後に落ちない役者の一人だ。「戦争の犬たち」でその経歴中、もっともアクションぽいパートに挑んだ彼は、役作りの狙いを次のように語っている。「演技は一瞬の燃焼が勝負だ。物理的にも精神的にも常に自らをハングリーな状態においていい演技ができると考えている。この作品は単に傭兵の勇敢な行動を描いたものではない。妻に去られ、友に死なれ、自らの行動にむなしさを抱く傭兵の苦い思いが、作品の重要なポイントとなっている。その辺を見逃さないでほしい」
☆カリブ海にアフリカを見つけた!
ドラマの上では中央アメリカ→ニューヨーク→ロンドン→フランス→ベルギー→スペイン→イタリア→西アフリカと目まぐるしく舞台の変わる本編だが、実際にはロンドン、マイアミ、ニューヨーク、そしてカリブ海沿岸のベリーズ(旧英領ホンジュラス)でロケが行われた。
ベリーズは、製作のラリー・ドウエイと監督アービンが中米14ヶ国をリサーチして決定したもので、決して豊かではない経済状態と、高い日中気温、市街の地形などが、フォーサイスの描いた独裁国サンガロをほうふつさせている。
☆「戦争の犬たち」はフォーサイスの現実の行動のドラマ化だ!
「戦争の犬たち」は原作者フォーサイスがビアフラ紛争('69〜'70:ナイジェリアで起きた種属間戦争)をもとに書きあげたといわれるスリリングな傭兵アクションだ。BBCのリポーターとしてのフォーサイスがそこで見たものは、血みどろの覇権闘争に走る権力者と民衆の悲惨な姿、そして、戦いのはざまでみじんの感傷もなく死んでゆく“戦争の犬”と呼ばれる傭兵の実態だった。
そのジャーナリスティックな筆緻は、ダーティな国際政治の裏面を白日にさらし、傭兵という知られざるアウトサイダーに光を当てて、世界の読者を興奮の渦に叩きこんだ。
ところが、78年4月、イギリスのサンデータイムズが「戦争の犬たち」は、フォーサイスが実際に作戦・指揮した赤道ギニア・マシアス政権の転覆計画が土台となっているとすっぱ抜いた。作戦そのものは中途で挫折したが,「戦争──」で描かれる微に入り細にうがった作戦計画は、フォーサイスの実体験なのだという。これについてフォーサイスは否定も肯定もしていないが、彼の作品がニューズ・リールの活字化といわれる所以もこの辺にあるのかも知れない。 |