[解説]
ハリウッドではB級映画の異端児、フランスでは戦後アメリカの3大監督の一人という評価の違いの甚しい監督。それがサミュエル・フラーである。当年とって66才のこのユダヤ人の映画監督はあまりにも遅咲きの桜といった感じだが、いまやっと花が開こうとしている。
最新作「最前戦物語」が本国アメリカではまァまァのヒット、ヨーロッパではかなりの成績をあげるヒットとなったからである。
映画は、第一次大戦に生き残った軍曹が、第二次大戦にも参戦し、古参の軍曹として、若いヤンキー気質丸出しの4人の兵士を率いてヨーロッパ戦線の最前線を転戦するという内容だが、その描き方はこれまでの戦争映画のあらゆるパターンを排撃するものである。
「戦場では生き残ることが栄光だ」というしめくくりの軍曹のセリフに象徴されていると思うが、エポックメーキングとなったヨーロッパの苛烈な戦線のことごとくに身を置きながらも、軍曹と部下の4人組はどういうわけか生き残ってしまうのである。彼らはすべて無傷で終戦を迎える。
したがってその描き方はハードボイルドタッチでもあり、時にはブラックジョークを思わせるギャグまがいのシーンも輩出する“戦場の青春グラフィティ“なのだ。
映画はまず1918年、第一次大戦の終了時、4時間前に終戦になったことを知らない軍曹が、一人のドイツ兵を殺してしまうところから始まる。このモノクロシーンが終わるとカラーとなり、第二次大戦の1942年、アメリカ陸軍がさいごの敗走を記録した、「キャサリン・パス」を映し出す。このあとシーンは南仏のヴィシー→北アフリカ戦線→シシリー→ベルギー→ノルマンジー→チェコと移動することになるが、7ヶ国7つの戦場が映画の舞台となるのである。
場所はほとんど(フラーの言によれば96パーセント)がイスラエルで行われた。砂漠も、森も海もみなそこにあったのだという。シナリオはフラー自身によるものだが、これはかなり自伝的要素の強いものである。4人組の一人、ザブ(ロバート・キャラディン)というキャラクターが彼そのものだが、フラー自身が、第二次大戦中は、第一師団の小銃歩兵として北アフリカからチェコスロバキアに進駐したのだという。
出演は、ただ軍曹と呼ばれる男にリー・マービン。4人組に「スター・ウォーズ」のマーク・ハミル、「ミーン・ストリート」のロバート・キャラディン、「グリース」のケリー・ワード、TVドラマ「スパロー」のボビィ・ディチコ。紅一点で「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」のステファーヌ・オードラン。
プロデューサーはロジャー・コーマンの兄ジーン・コーマン。撮影はイスラエルのアダム・グリーンバーグ。音楽はダナ・カプロフ。 |