「The Thin Red Line」− 傑作の予感
ジェフリー・ウェルズ(LAタイムズ)

スティーブン・スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」に対する評価は、今や法悦の(ecstatic)
境地に達しつつある。興業収入も膨大なものだ。スピルバーグと、製作会社のDreamWorksにとって、
これ以上望むことがあるとしたら、それは、来年のアカデミー賞のとき、戦場に敵の姿が無くなること
だろう。

この期待は、7月の終りに、テレンス・マリックの「The Thin Red Line」の完成が、20世紀FOXが望
んでいた、今年のクリスマスの時期の公開には間に合わないかもしれないという噂が流れたとき、大い
に高まった。SPRと同じように、TRLは、骨太な、戦争の恐怖を真っ正面から見据えた作品である。

「遅れる」という噂は、当初は信憑性が高いように思われた。しかし、現時点では、何とも言えない状
況になってきている。

「マリック自身、クリスマス公開に間に合うかどうか、定かではないようです。」
映画界の内情に詳しい、ある関係者は、7月の半ばにこう語った。マリックは、これまで、予定された
公開期日までに作品を完成させるというプレッシャーを受けたことがない。風説では、FOXの重役陣は、
完成までのスケジュールについて、「とても好意的で紳士的」だと、マリックは言っているようである。

再び、映画界の内情に詳しい関係者から得た情報を提供すると、マリックは、今、TRLの編集の最中で、
6時間分の映像を、劇場公開に適した上映時間にまで削る作業に取り組んでいるようである。最終的に
は、3時間程度になる見込みが強く、順調にゆけば、8月中には完成する可能性もあるようだ。

FOXは、遅れるという噂に対しては、慌てず騒がずという姿勢を保っている。
「我々としては、何とかクリスマスの頃に公開したいという希望は持っています。遅くとも、年末まで
には公開したいですね。しかし、マリック監督が、デッドラインまでにTRLを完成させられなかったと
しても、それは仕方の無いことでしょう。彼自身が完全に納得のゆくように仕事をさせて上げるしかな
いですから。結局、予定通りに完成すれば、公開しますが、間に合わなければ、完成するまで待つとい
うことです。」

仮に8月中の完成は無理としても、マリックには、ほぼ5ヶ月間の時間がある。
クリスマス時期の公開までに3時間の劇場公開版を完成させるのは、決して苛酷なスケジュールではない。
もしもTRLがクリスマス公開に間に合うとなると、それは、スピルバーグとDreamWorkersにとって、
余り有り難いニュースではない。SPRは素晴らしい作品であり、アカデミー賞の全部門で上位にノミネ
ートされることは間違い無いが、TRLも、兵士の視点から第二次大戦の戦いを描いた作品であり、メイ
ン・テーマも、SPRと同様、戦争の中での人間性を見つめるものだ。しかも、クリスマス公開となれば、
アカデミー賞の投票が行なわれる時期に近く、選考委員に与える印象が強い。つまり、TRLは、SPRの
強力な競争相手になる可能性を持っているのである。

マリックの新作に対する期待感は、間違いなく大きい。彼が自ら執筆した「The Thin Red Line」の脚
本は、これまで、数ヶ月間にわたって、ハリウッドの関係者達の間で読まれているが、読んだ人達は、
誰もが、深い感銘を受けている。また、TRLのキャストの強力なスターパワーも無視することはできな
い。これらに、マリックの持つ、殆ど神話的とも言うべき映画界での地位を考え併せると、TRLが、彼
の以前の作品2本と同様、様々な映画賞を総なめにする傑作になると信じる(あるいは期待する)人々
が多いのも、理解できることかもしれない。