SPR脚本草稿 (翻訳:ジェイさん)
戦争では、一人の人間の生命は重要ではない。何千もの若者が戦場に赴き、勇敢に
戦う。ある者は生き残るが、ある者は木箱に詰められて帰還する。この木箱が彼等
の永遠の休息所となるのだ。 余りにも多くの家族が、愛する者を失って嘆き悲しむ
一方で、更に多くの男達が戦場に送られる。大量生産のラインを経て、悪夢のよう
な戦いの中へほうり込まれるのだ。一人の人間の生命に、どれほどの価値があろう
か?
ときは1944年。ヨーロッパ戦線では、ナチが西ヨーロッパを席捲していた。毎日の
ように、幾多の都市や国々を手中に収めながら。敗北という醜悪な事態に直面した
連合軍は、史上最大の上陸作戦を計画する。ドイツ軍の進撃に決定的な打撃を与え
て、彼等に撤退を余儀なくさせるために。1944年6月6日 - D-Day - Saving
Private Ryanは、ここから始まる…
全ての死は悲劇だ。殊に、死んだ者と人生の歩みを共にした人々にとっては尚更
だ。1週間にも満たない間に、ライアン家は、耐え難い悲劇に打ちのめされた。4人
の息子達のうち、3人が、世界各地の戦場で戦死したのだ。ショーン・ライアン、ノ
ルマンディーの「オマハ・ビーチ」。ピーター・ライアン、同じく「ユタ・ビー
チ」。そしてダニエル・ライアン、ニューギニア戦線。 残るは、一等兵、ジェーム
ズ・ライアン(マット・デイモン)一人。 かくして、彼を探し出し、故郷へ連れ帰
す決定が下される。しかし、ライアン一等兵は、敵地の只中で行方不明。軍当局に
は、彼の生死すら分からないのだ…
巨大なノルマンディー上陸作戦を背景に、ジョン・ミラー大尉(トム・ハンクス)
を指揮官とする8名の兵士が、ライアンを探すべく敵地に送り込まれる。それは、一
人の生命を救うために、8名の兵士の生命を死の危険に曝す作戦だ。 それだけの価
値があるのか? 「こんなめちゃくちゃな作戦は聞いたことがないぞ!」初期の脚本
の中で、一人の兵士はこう叫ぶ。 隊の誰もが、自分の信念を試されることになる…
誰もが、生きては帰れないかもしれない、作戦は無為に終わるかもしれないと知り
ながら出動する。そして彼等の苦闘を通じて、戦争の恐怖と同時に、我々の自由の
ために戦う者達の勇気が浮き彫りにされる。
SPR脚本 - 最初の2ページ
フェード・イン:
フィルム・クレジット:黒地に白文字。背後に、艦砲射撃の大地を揺るがす轟音が
響く。その力は恐るべきものだ。身体を突き抜け、髪を逆立たせ、鼓膜を直撃す
る。
フェード・イン:
オマハ・ビーチ - ノルマンディー- 夜明け
艦砲射撃の轟音が続く中、火を噴く大砲が映し出される。巨大な15インチ砲。
押し寄せる上陸用舟艇の群れ。
悪夢の真っ只中へ突入。ドイツ軍の砲弾の凄まじい炸裂と、地雷が仕込まれた障害
物が、ビーチを切り刻む。何百ものドイツ軍の機関銃が、曳光弾の真っ赤な雪嵐を
兵士達に浴びせかける。
沖合い。
人間が集結させた史上最大の船団。5千隻の軍用艦艇。駆逐艦、戦艦、掃海艇、兵員
運搬船。
字幕:
オマハ・ビーチ、ノルマンディー
1944年6月6日
0600時
何百もの上陸用舟艇
それぞれが30名の兵士を乗せている。ビーチは近い。
崖
ビーチの尽きるところ、90フィートの崖がそびえる。頂上にはバンカー。
機関銃陣地が張り巡らされている。それらの陣地とビーチ全体との間に、銃火
を遮る物は何も無い。
上陸用舟艇
崖のふもとへ向かって進む。集中砲火の中。
字幕:
これは、事実に基く物語である。
上陸用舟艇
波間を縫って進む。
カメラが、兵士達の顔を捉えながら移動する。
少年達。殆どが18歳か19歳。屈強。全員が厳しい訓練に耐えてきた。
周囲を取り巻く激怒から、自分を切り離そうと努める。
近くの上陸用舟艇が敵弾の直撃を受ける。
燃料に引火、猛烈な爆発、炎、金属、肉片。
操舵手が必死に舵をとる。そこら中に砲弾が炸裂する。流出した油で、海面
は火の海。船首に砲弾が落下する。
操舵手が木っ端微塵に飛び散る。
血と肉片が、背後の兵士達に降り注ぐ。兵曹が代って舵をとる。
若い兵士
彼の顔は、操舵手の死体の残骸に覆われている。正気を失い始める。
身体を震わせ、号泣する。彼の名はデランシー。
彼の周囲の少年達
必死に正面を見据えようとする。しかし恐怖が彼等を捉え、広がり始める。
一人の男
兵士達をかき分けて前へ出る。デランシーの前へ。
その男は、ジョン・ミラー大尉。30歳代前半。この船で一番の年長者。
平静、歴戦のつわもの、力に満ち、周囲の地獄を意にも介さない。
彼は笑い、葉巻を口にくわえ、デランシーのヘルメットでマッチを擦り、
葉巻に火を付ける。
デランシーは目をそらそうとするが、ミラーは彼のあごをつかんで
無理矢理自分の目を見させる。ミラーは笑う。デランシーは恐怖におののく。
デランシー:
大尉殿、俺達は皆死ぬんでしょうか?
ミラー:
とんでもねえ。せいぜいいって三分の二までだ。
デランシー:
ああ、神様…
ミラー:
みんな、おまえ達の左に居る奴を見るんだ。次は
右に居る奴だ。そいつらは哀れな阿呆だぜ。
くたばるのはそいつらさ、おまえ達はかすり傷ひとつ
負わねえよ。
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