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ロサンジェルス・タイムス8月5日付記事記事(翻訳:ジェイさん)


「SPRの遺産」とどう取り組むか:スティーブン・スピルバーグの大作は、精神性、真実性両面での新たなスタンダードを築いた。 今後作られる全ての第二次世界大戦映画は、このスタンダードに照らし合わせて評価されるだろう。

LAタイムズ常任記者、ロバート・W・ウェルコス

地中海のマルタ島で、ハリウッドが潜水艦を建造中だ。完成すれば、重さ400トン、実物大のこのUボートは、潜水こそできないものの、9フィートの波を持ちこたえるだけの本格的な艦艇になる。このUボートは、プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスが制作する第二次大戦スリラー、「U-571」の目玉となる。ドイツ軍の潜水艦から、極秘の暗号解読機を盗み出そうとする米軍の活動を描く作品だ。

ラウレンティスのスタッフは、余程本腰を入れて実物さながらのUボートを作らなければならない。「 Saving Private Ryan」という、たった1本の映画が、第二次大戦映画の「リアリティー・チェック」の基準を引き上げてしまったからだ。

フィルムメーカーやスタジオの重役達が今、口を揃えて言うのは、スピルバーグの新作のノルマンディーのビーチや村での迫真の戦闘描写のお陰で、今後の第二次世界大戦映画の全てが、従来より遥かに高いハードルを越えなければならなくなったということである。それと同時に、SPRは、戦争映画そのものの一般の認識を塗り替えてしまったことも事実だ。今後は、観衆や映画制作会社に、戦争映画の企画を売り込むことが今までよりも容易になるだろう。

「しかし、」彼等は言う。「戦闘を軽薄な娯楽として捉え、精神的な深みを持たない戦争映画が観衆に受ける時代は永遠に過ぎ去ったことは確かだ。」

ユニバーサル制作の「U-571」の監督、ジョナサン・モストウはこう語る。「SPRが現われた後では、ジェットコースターを設計するようなやり方で第二次大戦映画を作ることは金輪際できないですね。つまり、第二次大戦を“だしにして”、暴力礼賛的で軽薄なアクション映画を作ろうとしても、もう観衆もスタジオも見向きもしないだろうということです。少なくとも、私は、そういった映画は作りたくないですね。」

昔、一世を風靡したテレビ・シリーズ、「コンバット!」の映画化権を持っている、スティーブ・ルービンは、SPRの出現のお陰で、今後、戦争映画を作るのは難しくなったと語る。「 SPRが出てしまった今、“Kelly's Heroes”(邦題:戦略大作戦)みたいな映画を作ろうとしても、それは無理な相談でしょう。今後、第二次大戦映画を観に来る観衆は、超人的なヒーローや、コメディー的な要素を受け入れなくなるのではないかと思います。第二次世界大戦は、非常にシリアスな主題になってしまいましたからね。どういう取り組みで作るか、気を付けなければなりませんね。軽い気持ちで作ったら火傷をするでしょう。定石的なストーリー展開や、暴力をスポーツみたいに描くことは禁物です。そんなことは批評家達が許さないだろうし、実戦経験者達も“これはおかしい。”と言うでしょうからね。」

1989年にルービンが「コンバット!」の映画化権を買い取ったとき、制作会社の重役達は、「第二次大戦ものは今の観客には受けないよ。」と言ったそうである。「馬鹿げた考え方ですが、そういった考え方が相場でした。」ルービンは回想する。「“コンバット!の映画化権を買い取った当時、有力な雑誌の“バラエティー”が、映画のついての特集記事を掲載したんですが、その記事の中に、“第二次大戦映画は興行的にもはや成り立たない。”という指摘がありました。当時としては無理もない指摘で、ABCテレビが放映した“ War and Remembrance”という第二次大戦を扱ったミニ・シリーズなんか、さんざんな視聴率でした。とにかく、第二次大戦ものは、もう一般受けしないというのが、共通した考え方だったかもしれませんね。

第二次大戦を扱った映画を復活させる上での大きな問題の一つは、当時の敵国が、今では米国の友好国だということである。あるスタジオの重役は私にこう問い掛けた。「今の国際政治状況の下で、ドイツ人や日本人を殺すことが妥当なこととして受け入れられますか?」名前は伏せておいて欲しいと断った上で、彼は続けた。「今の世界は、昔よりも優しくて柔和になっているんですよ。例えば、“ジャップ”とひとこと言っただけで、世間から轟々の批難を受けるでしょう? 第二次大戦の頃とは、今は世界が違うんですよ。」

SPRのプロデューサーの一人である、ゲイリー・レビンソンは、スピルバーグの新作の成功によって、フィルムメーカー達の間で、第二次大戦期一般についての関心が再活性化されたことは間違いないと考える。「しかし、そういった気運が実際に映画として結実するかとなると、これは容易なことではないでしょう。自分も第二次大戦ものに取り組んでみようと考える映画制作者達に、スティーブンが課した課題は信じられない大きいですから。」

ドリームワークス/パラマウント制作の「Saving Private Ryan」に対する観衆の反応について、今、最も注目しているスタジオが、20世紀フォックスであることは確かだ。同社が制作した、テレンス・マリック監督の第二次大戦映画、「 The Thin Red Line」が、今、ポスト・プロダクションのプロセスの最中だからである。

フォックスは、TRLの全米公開を、クリスマスの頃と見込んでいるが、最終決定が下されるのは、この夏の終わり頃になる。 ショーン・ペン、ジョン・トラボルタ、ジョージ・クルーニーなど、オールスター・キャストで作られるこの映画は、“地上より永遠に”の続編小説として、ジェームズ・ジョーンズが書いた同名の小説に基くものだ。ガダルカナル島で日本軍と戦う、アメリカ軍のある分隊にまつわる物語で、Fox2000とフェニックス・ピクチャーズから配給される。

フォックスの重役達は、非公式にではあるが、マリックの作品の成功に大きな期待をかけていることを認めている。しかし、SPRとTRLを比較することは避けている。 「TRLは、太平洋戦線という、第二次大戦のもう一つの局面を描いた作品です。欧州戦線じゃなくてね。」重役の一人は語る。「2本の作品に、似通ったところは全くありません。SPRは、戦争そのものを際立てて描いていますが、TRLは、人間の感情を追求した作品です。むしろ、“タイタニック”の方に近い作品でしょう。登場人物の一人一人に対して観衆が抱く感情から見れば。」

映画が成功するためには、まず、良い脚本からスタートすなければならない。これは、フィルムメーカー達が共通して信じていることだ。第二次大戦映画も例外ではない。何よりもまず、パワフルな脚本を書くこと。そうすれば、制作会社もいずれは映画化を決定する。これが、フィルムメーカー達の信念だ。事実、パラマウントでは、現在、次の4つの第二次大戦映画の脚本が、書き進められている。
・ “Combat !”
・ “Earth, Wings and Fire”−俳優のトム・クルーズが企画している、第二次大戦中の「フライング・タイガーズ」のパイロット達を描いた作品。
・ “With Wings as Eagles” − 第二次大戦中、自分の監督下の捕虜の処刑を拒んだあるドイツ軍将校にまつわる作品。
・ “The Emperor's General” − 第二次大戦後、占領軍総司令官ダグラス・マッカーサー将軍を巻き込んで企てられる旧日本軍の大物将軍の暗殺計画を描いた作品。

一方、ドリームワークスも、「Thunder Below」という、第二次大戦中最も多くの勲章を授与された、ある潜水艦の艦長にまつわる作品の脚本を起草中である。

更に、ユニバーサルも、「To the White Sea」という、ジェームズ・ディッキーの小説に基いた脚本を起草している。第二次大戦中、東京上空で乗機が撃墜されたアメリカの機銃手にまつわる物語だ。

「U‐571」に話を戻すと、ユニバーサルでは、スケジュール調整が付かず、出演を断念したマイケル・ダグラスに代って、比較的無名の俳優の中から主役を抜擢することに決定した。監督のモストウによると、撮影は、この11月から来年の1月にかけて、マルタ島とローマで行なうとのことである。モストウは語る。「この映画で私がやろうとしているのは、第二次大戦中、大西洋ではどのような戦いが行なわれていたのかということ、その感覚を観衆に味わってもらうということに尽きます。海軍や潜水艦の戦歴を、史実として忠実に記録しようとは思いませんし、“Das Boot”(邦題:Uボート)がやったのと同じことをしようとも思いません。 スティーブンの新作は、ノルマンディー上陸のときの兵士達の経験が、どれほど恐ろしいものだったかを、見事に描き切りました。重要なのは、彼には、あの映画を通じて観衆に自分が何を伝えたいのか、それを充分に自覚した上での一つのビジョンがあったということでしょう。SPRを観終えて、劇場を後にする人々は、きっと心中でこう思うに違いありません。“今度退役軍人に会う機会があったら、敬礼で迎えよう。”」

 

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